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福井大学 地域創生推進本部「知の創造」活動プロジェクト (前編)
記事は前編・後編と分かれています。前編では活動拠点の「ちえなみき」で元福井大学の特命講師(現:高崎経済大学准教授)でプロジェクト代表の嘉瀬井さんにお話を伺い、後編では学生さんにさらに詳しくお話をお聞きしました。
- 名称
- 福井大学 地域創生推進本部「知の創造」活動プロジェクト
- 活動内容
- 「ちえなみき」を拠点に、福井大学 教育学部生が地域の中で「知」を創造することを目的とした1年間の活動。
- 人数
- プロジェクト代表1名、参加学生7名、メンター5名 ※2024年度
「知の創造」活動プロジェクトとは
福井大学では、教育機関や地方公共団体、企業などと連携し、地域が求める人材の育成と社会貢献を目的として「地域創生推進本部」を設置しています。地域創生推進本部が進める「知の創造」活動プロジェクトは、次世代を担う学生が、地域の中で地域と共に「知」を創造することが目的です。本プロジェクトは敦賀市、丸善雄松堂、福井大学による産官学共創の取り組みとして実施しました。
活動の拠点である「ちえなみき」は、JR敦賀駅前の複合施設 TSURUGA POLT SQUARE「otta」の中にある敦賀市知育・啓発施設です。丸善雄松堂と編集工学研究所が敦賀市からの委託により運営する全国初の公設民営書店です。ここでは、本を読んだり買ったりすることができます。読書スペースはもちろん、学習スペースやカフェ、親子で遊べる空間もあります。

学生のアイデアが実行できる環境
「知の創造」活動プロジェクトは産官学共創の取り組みなんですね。
嘉瀬井活動には、学生たちの企画の段階から報告会まで、敦賀市、丸善雄松堂、そして「ちえなみき」の笹本店長がメンターとして関わってくださり、コメントをいただいています。この取り組みがうまく進んでいるのは、そうした細かいところからプレゼンテーションしているからだと思います。この取り組みにおいて学生は、一年かけて、「知」を創造し、実装することを学びます。ゴールとして、市民とともに知を次世代に伝え残すイベントを企画します。そのイベントチラシを配布する際にも集客の見込みやターゲット、内容について意見をもらいます。単なる就業体験ではなかったという点が、良かったと感じています。
まちづくりというと、「どうすればうまくいくのか」と結果に目が行きがちですが、それよりも、まずは自分たちで感じて、行動してみることが大切です。学生たちにはもっと主体的に地域と関わり、「自分たちが地域の担い手である」ということを、少しでも自覚してくれたらという思いがあります。
学生さんはフィードバックがある環境で活動が行えているんですね。活動の拠点となった「ちえなみき」では、どのような取り組みが行われたのでしょうか。
嘉瀬井「ちえなみき」では自由に場所やものを使うことができました。2階の「絵本ワンダーランド」というスペースでは、キーボードオルガンを使って歌うことができました。通常、図書館では考えられないことですよね。イベントのテーマであったわらべ歌の絵本を「読む」だけでなく「歌う」という実践に、「ちえなみき」の笹本店長が賛同してくださったんです。大学だけでなく、産官学共創のプロジェクトだったということが大きいですね。
絵本ワンダーランド
館内で本を探すお絵かきイベント
学生さんたちはチームごとにワークショップやイベントを実施しているそうですね。
嘉瀬井チームごとに、これまで「ちえなみき」内で本を探し出すイベント「ブックアドベンチャー」や北陸新幹線を利用した観光客向けの観光リーフレットをつくりました。本との新たな出会いとなる「本みくじ」は「ちえなみき」の1階で展示しました。
2024年度は、地域の子どもとの連携や多様な価値観をつなげること、次世代とのつながりを実装することをコンセプトにしました。地域の小学生を対象としたブックツリーづくりイベントや絵本の好きな場面をキーホルダーにするワークショップを開催しました。
ワークショップで作ったものは手作りであたたかみがありますね。特に人気だったイベントはありましたか。
嘉瀬井お絵かきイベントはとても人気があります。
「ちえなみき」1階にある黒板を使って、子どもたちと一緒に絵を描こうというアイデアがありました。クリスマスなど季節のイベントに合わせて絵を描くのも良いのでは、という話も出ましたが、お絵かきイベントは非常に人気が高く、限られたスペースに多くの人が集まることが予想されました。安全面を考慮し、この企画は見送ることになりました。
本棚にある黒板
嘉瀬井ただし、絵を描いて終わらせるのはやめようと考えました。つまり、イベントを企画する学生、そのイベントに参加してくださる市内の子どもたち双方にとって学びを得ることを目指しました。2023年度に開催した「あなたもわたしも有名画家!」というイベントでは、美術専攻の学生が塗り絵の題材となる絵画を選び、それをもとに塗り絵の素材を作成しました。
そこで、このイベントでは子どもたちは塗り絵を選び、絵を紹介する本を「ちえなみき」で探してきてもらいました。ひとつの絵から作家や別の作品に関心が向くところまでを企図しました。
企画した学生さんたちの反応はいかがでしたか。
嘉瀬井企画した学生たちは、「教育実習とは全く違う経験だった」と話していました。教育実習では絵を模写することが多いのに対し、このイベントでは使う色鉛筆の指定もなく、イベントに参加してくださった子どもたちの自由な表現を見ることができたそうです。
また、保護者の方が「うちの子がこんな絵に興味を持っていたなんて」と驚かれていました。絵を描いて、本を探すということは「ちえなみき」ならではな気がします。
あなたもわたしも有名画家!の展示
図書館総合展での発信と広がり
2023年の図書館総合展でフォーラムに登壇され、翌年の図書館総合展では初めてポスターセッションに出展されたんですよね。
嘉瀬井フォーラム会場では「ちえなみき」で実践している活動について報告しました。大学としては私よりも学生が登壇し、その場で感じたことを言葉にした方がいいなと思いました。また、丸善雄松堂の展示ブース内で活動報告をし、50人以上の方が集まってくださいました。図書館総合展を通じて「知の創造」プロジェクトを発信できたことは、私たちにとって大きな励みになっています。
図書館総合展の後にも反応があったのですね。
嘉瀬井印象深いことは、昨年の図書館総合展のあと、福井県内、富山や横浜から司書の方々が来てくださり、これまでのイベントで用いたグッズを見て、「うちの小学校でもやってもいいですか?」と持ち帰ってくださったことです。こうした反響から、活動の広がりを感じました。
さらに、敦賀市の中学校の先生は「うちは中学校なので、高学年向けのものをください」とおっしゃって、資料を持ち帰ってくださいました。プロの方からこうした反応があるのは、本当に嬉しいことでした。
お話を聞いて感じた 「人から人へ」
嘉瀬井さんから「知の創造」活動プロジェクトの内容や活動拠点である「ちえなみき」についてお話を伺う中で、特に印象的だったのが「環境に恵まれた」という言葉でした。嘉瀬井さんご自身や、プロジェクトに関わる学生さんたちの熱意と行動力が、周囲の人々を惹きつける大きな力になっているのだと思います。だからこそ、自然と活動しやすい環境が整い、良い循環がここでは生まれているように感じました。
私たちがお話を伺っていた隣の机では、「ちえなみき」の関係者の方々が打ち合わせをされていました。この場所は市民や観光客にも声が届き、視界にも入る、オープンな空間です。「ちえなみき」では会議もこうした開かれた場所で行われることが多いそうです。「知の創造」活動プロジェクトの報告会や日々の活動も、同様にこの場で実施されています。
また、取材当日に「ちえなみき」の笹本店長にもお話を伺うことができました。笹本店長は、「実際に使っている様子を見てもらうことで、口コミや興味を持ってもらえるんです。これまで一度もイベントやセミナーを開催したことがない方の利用も多いんですよ」と話されていました。この言葉から、「行動へと導く仕組みづくり」は、“人から人へ”とつくられるものなのだと、あらためて実感しました。
取材を行った場所 セミナー&スタディ
後編では、「知の創造」活動プロジェクトで活動する学生さんお二人に「知の創造」活動プロジェクトに対する思いなどをお聞きしました。ぜひこちらもご覧ください。
館内見学:会話が生まれる場所「ちえなみき」
学生たちは、活動の最初に「ちえなみき」の館内見学ツアーに参加するそうです。取材後、私たちも館内を案内していただきました。
館内の本は、テーマごとに並べられていて、テーマが変わるたびに棚の装飾や雰囲気も変化していきます。歩いていると奥の本が見え隠れし、「次はどんな本があるんだろう」と好奇心がくすぐられました。また、本棚の引き出しを開けると中にも本が収納されているなど、細部にまで工夫が施されていました。進んでいくと行き止まりのところもあり、探検気分を味わえるような遊び心が溢れていました。子どもたちがここで本を探す時間は楽しいだろうなと感じました。本を発見したら誰かに言いたい、読んでみたいと本を介して自然と会話が生まれるような空間でした。

格子戸の隙間から見える絵本
2階では、机に向かって勉強や作業に取り組む生徒や学生や大人の姿が見られました。机にはコンセントが備えられており、作業がはかどりそうです。図書館のような静かな空間ではなく、ここでは会話ができることが前提になっています。カフェのような、ほどよく話し声が聞こえる環境を求めて訪れているのだと感じました。
子どもから大人まで、誰もが自分に合った過ごし方を見つけられる施設でした。敦賀駅は北陸新幹線の終着駅であり、始発駅です。敦賀を訪れる機会があれば、ぜひ「ちえなみき」で、本との新しい出会いを楽しんでみてください。
文/藤井夏美 (株式会社ブレインテック Jcross担当)