なかの人たち

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第9回 南山泰之 様国立極地研究所情報図書室

掲載:2017年9月29日

東京都立川市にある国立極地研究所(略称「極地研」)で司書として働く南山泰之さんは、大学では法律を学び、南極に観測隊員として赴任したという経歴をお持ちで、最近ではオープンサイエンスなどをテーマにした講演もこなしています。

今回は南山さんに、これまでのご自身のことや、図書館員としての考えなどをうかがいました。

南山 泰之 様
国立極地研究所情報図書室
〒190-8518 東京都立川市緑町10-3
Webサイト
http://www.nipr.ac.jp/publication/library.html
掲載している情報は2017年5月現在のものです。

もともと極地に興味があったわけではないです

まずは、現在働いている国立極地研究所でのお仕事についてお聞きしたいと思います。国立極地研究所とはどのような施設なのですか?

南山泰之さん(以下、南山)極地研では、南極や北極での観測を中心にしたいろいろな研究を行なっています。僕の所属する情報図書室では、それらの研究活動を支援するために極地を中心とした多様な分野の資料を収集、整理、提供しています。

そのほかにも、極域科学の研究成果を発信するために、情報図書室では学術出版物の刊行や国立極地研究所学術情報リポジトリ[※1]での公開も行なっています。

特殊な分野ですが、もともと北極・南極などに興味をお持ちだったのですか?

南山正直に言えば無かったです(笑)。就職当時、いくつか図書館の採用試験を受けて、たまたま受かったというのが近いですね。

国立大学が法人化して1年後の試験だったんですが、うちのような機関(大学共同利用機関法人)は国立大学法人の職員採用と一緒の枠組みで、関東甲信越地方とかの地方ごとに分かれて募集しています。ただ、各地方で図書系の募集を出してるところって例年かなり少なくて、当時の関東甲信越地方では3,4箇所しかありませんでした。

極地研もちょうど欠員が出て募集を出してたので、面接を受けに行きました。

南山さん

情報図書室には何名のスタッフがいらっしゃるのですか?

南山情報図書室には室長を含めて8名いますが、室長は研究職ですので、他の7名がスタッフです。情報図書室は極地研の出版業務も担っていて、3名が出版を専任で担当し、あとの4名がいわゆる図書館の仕事をしています。

年間どれくらい出版しているのですか?

南山刊行数としては20点くらいかな。他機関の紀要と比べると、それなりに多い方だと思います。

その中で南山さんのお仕事というのは?

南山常勤の方が今年の4月から1名増えたんですけど、それまでずっと一人だったので全体を一通り見るような仕事ですね。場合によっては目録も取りますが、図書の発注や雑誌の契約とか、会計的な部分が中心です。

これまでは、常勤の職員さんは南山さんお一人だったのですか?

南山いえ、もともとは上に一人係長がいたんですけど、ここ3年は僕一人でした。今年度は優秀な方が来てくださって助かっています。

国立極地研究所の建物外観

「所内にちょうど良さそうなのがいる」という話になって

ところで、南極に行かれていたのですよね?それはどのような経緯で決まったのですか?立候補されたのですか?

南山はい、行きました。観測隊への参加は、基本的には希望者の応募です。ただ僕の場合はちょっと特殊で、もともと行く予定だった人が都合で行けなくなってしまって、代わりの人員を所内で探していたら、「ちょうど良さそうなのがいる」という話になったみたいで。

ある日、当時の課長に「南山君、南極に興味はあるかい?」って聞かれて、「はい、まぁ」と答えたら、「そうか、そうか」と。

話はそれだけで終わってしまって、僕が行くことになりました。ひどいですよね(笑)。

国内のどこかじゃなくて南極なのに...(笑)。

南山当時、入所してまだ2年目でした。

どれくらいの期間南極に行かれていたのですか?

南山船に乗っている期間も含めて4ヶ月くらいですね。第49次の観察隊に夏隊で参加しました。観測隊員としては2007年7月から翌年の3月まで活動しているんですが、7月から11月までは日本にいて、出国の準備をしていました。

ずっと南極ではないんですね?

南山南極にいたのは実質2か月くらいです。当時は極地研が板橋にあったのですが、観測隊員室というところで、出発前はひたすら荷物を段ボールに詰めていました。

食料とかも?

南山観測隊では、食料はほとんどオーストラリアで調達します。昭和基地から一番近い場所ですね。日本から持っていくと腐っちゃうものもあるので。

あれ?日本から直接船で南極まで行かないのですか!? 港で観測隊を見送る風景をイメージしていました。

南山僕が行く少し前くらいまでは、観測隊員も日本から自衛隊の方と一緒に船で行っていたんですが、ただ、船だとオーストラリアに行くだけで2週間くらいかかって...。

それで今は、自衛隊の方が日本からオーストラリアまで船で行って、観測隊員はそれとは別に飛行機でオーストラリアまで行ってそこで合流します。ちなみにオーストラリアから南極までは船で約1ヶ月くらいですね。

船室も僕の時は二人一部屋でまだ良い方だったらしいんですが、ベッドがあってそれぞれに机があって、以上、という感じで。お風呂もありますが、基本は海水風呂でした。

南極ではどのような仕事をされていたのですか? 図書に関連する仕事みたいなものはあるのでしょうか?

南山ほぼないです。昭和基地には図書室という枠組みが特になくて、ただ本が置いてあるだけなんですね。

隊長が使いたい本は隊長室に置くとか、この辺にはこういう本があるべきだという感じで、例えば食堂にはアルバムが置いてあるべきだ、みたいなのがあって、そんな風にあちこちに本が置いてあるだけでした。

一応、というか図書館員なので(笑)、気になって片付けたりはしていましたが、別に仕事というわけでなくて空いた時間に、という感じです。

担当は庶務でしたが、事務的な仕事はほとんどなく、雪上車を動かしたり、ねじを回して何か作ったりと、肉体労働をしていましたね。

体力に自信がないとできませんね。

南山自信があるというか、やらざるを得ない状況ですね(笑)。

基地を建てたり、補修したりというのは雪が降っちゃうとできないので、越冬するために夏のうちにやります。なので、夏期間の方が人手が必要で、合計60人くらいいます。越冬隊は30人くらいです。

極地研ならではというか、普通に司書の仕事をしていたらできない貴重な体験ですね。

南山はい、おもしろかったです。思い返せば(笑)。

情報図書室内に飾られている南極大陸の地図

議論したり論理的に何かを積み上げていくことが好き

さて、南山さんの図書館との出会いをお聞かせください。

南山学生時代ですね。

学生時代というと、小中学校の頃はどうでしたか?

南山実はあまり使っていませんでしたね。

あぁ、でも、かなりの数、本は借りて読んでいましたね。母親が図書館で本を借りて読むのが好きで、その影響で僕も。

その頃は図書館が好きというよりは、単純に本が読みたくて公共図書館へ通っていました。

本が好きだったんですね。他にはどんなことをして遊んでいましたか?

南山小さい頃はゲームが大好きでしたね。ひとつのゲームを延々と、ギリギリまで遊びつくすみたいな。

クリアすることより、ギリギリに至るまでが面白くて。一度クリアしてからも攻略本を買ってまた遊び始めるのが大好きでした。まだ見ていないモンスターを探し出すとか、レベルも一番上に上がるまで遊んでましたね。

子どものころから何かを徹底的に追及するところがあったんですね。

南山かっこよく言えばそうなりますかね?(笑)

大学時代はどんな勉強をしていたのですか?

南山大学は法学部でした。

法律の勉強は面白くて今でも続けていますが、ただ、それを職にするにはどうなのかなと、当時思いまして。

法学部だと司法関係の仕事を目指すというわけではないのですね。

南山卒業しても、司法試験を受けるという選択肢を取る人は思っているほど多いわけではなくて、商社や銀行などに行くような人も結構いますね。

子どもの頃、弁護士とかに憧れていたというわけでは?

南山ないですね。高校までは数学が好きだったので、理学部を志望していたんです。

議論したり論理的に何かを積み上げていくみたいなことが好きで、大学受験を考えた時、それが法律への興味になったような。今思い返せば、多分、当時はどちらもやってみたかったんですね。

国立極地研究所 情報図書室の様子

大学時代に学んだ法律の知識が業務に役立っていることはありますか?

南山契約書を読む必要がある時とかには役立ってますよ。あとは、事務的な話をするときって規則とか文書ベースで話すことが多いですが、その辺は相手と同じような文脈で話せるというか。

他には、ライセンスの話とか。ウェブ上でどういう規約で使えるようにします、という内容を考えるときは、背景となる法律の知識とかがあると理解が早いです。

法学部から司書を目指すことになるきっかけはなんだったのでしょうか?

南山僕の学部では卒論は必須ではなかったのですが、ゼミ論というのがありまして、3、4年生の時に毎年2万字書けという...。

たくさんある法律の本の中からどれを選べばよいのか見当もつかなくて、自分で調べるにもそういう図書館の使い方をしたことがあまりなかったので途方に暮れました。

ゼミの先生に聞くとすごく丁寧に教えてくれるんですが、先生は当然専門家なのですさまじい量の文献を紹介してくれるんですね。

これは対応しきれないと思って、図書館の人にいろいろ助けてもらって、とりあえずこれを読んだら、といった感じでいくつかの本を薦めてもらいました。

その時に司書さんに助けられた経験が今につながってるというわけですね。

南山そうですね。職として意識したのはその時が初めてですね。

膨大な量の本の中から良いものを、その人に合うもの、必要としているものを出してくれるというのは、それは相当程度読み込んでないとできないことで、専門性というか、これは面白そうだなと思いました。

それで興味を持って、明確に司書を目指そうと思ったのはいつくらいですか?

南山4年生の時です。

そのタイミングから大学で司書の資格は取れたのですか?

南山僕の大学にも司書課程はあったんですが、学部が違うので、当時は取れなかったんです。それで、ダブルスクールが認められていた近畿大学の通信課程に4年生の時に入りました。

卒業後、少し空いて9月に就職しているんですが、司書の資格が取れたのは、働き始めてさらに1年後くらいです。

児童サービス論になかなか合格できなくて...(苦笑)。
他の科目は全部1年で取ったのに(笑)。

目録が図書館業務の醍醐味だと思っていた

極地研に入って南極に行った後は、通常の業務に戻られたのですか?

南山はい。以前と同じ情報図書室の業務に戻りました。

ただ、戻って1年くらいしてから極地研が現在の立川に移転して、さらにその2年後に、人事交流で東京大学駒場図書館へ異動となって、そこに3年間いました。

結構短い期間でいろいろなことがありましたね。大学図書館だと勝手が違いましたか?

南山僕が行ったのは駒場キャンパスでしたので、1、2年生の教養学部生が相手で、ここ(極地研)で研究者相手に仕事するのとは全然違いましたね。

春には新入生を相手に図書館オリエンテーションをやったりもしました。

大学では主にどのような業務を担当していたのですか?

南山受入がメインでしたね。目録もやっていました。

好きな図書館業務は何ですか?

南山もともとは目録がホントに大好きで、極地研に入った当初はずっと目録の仕事をやり続けてましたね。

レファレンスも意外と好きなんですが、レファレンスってその過程で、できるだけたくさんの中から本を絞り込むという作業がでてくるんですね。

ただ、それは、人が全部やらなくても良くて、機械的にできるように整備していくのでも良いと個人的には感じていて、要は絞り込んで「丁寧に出す」というところがやりたい。そこが興味の対象です。

なので、本の目録っていうのは図書館業務の一番の醍醐味だと思っていましたね。

もっとも、やっていくうちに、極地研の本でだんだん目録を取るものがなくなってしまったので、もっとそういう仕事ができることはないかな、となって、だんだんと電子系の目録というか、メタデータの話に踏み込んでいくようになりました。

情報図書室内の書架の様子

図書館の役割ってハブのようなもの

今、関心のあるテーマは何ですか?

南山オープンアクセス[※2]とか、オープンサイエンス[※3]などの話は、テーマとして非常に面白いのでずっとやってきたいなと思っています。

そもそもは、図書館の役割が何かというところに興味があって、研究支援の中で図書館は何をやるべきか、みたいな話は、オープンアクセス、オープンサイエンスの議論の中でするとしっくりくるというか、実際、よく議論されています。

中でも最近話題になっているのが、図書館の研究支援の中で、論文だけでなく研究データをどういうふうに扱うべきかという話ですが、オープンサイエンスでは、研究データを保存したり公開したりすることが重要になります。研究データが生まれたところから他の人に再利用されるところまでをきれいに扱っていくために、今までの図書館の仕事の延長線上で考えるとどの部分を担えばいいのか。

そうした話が、僕の好きなところにつながってくるんですね。

ちなみに今、南山さんの中にある「図書館の役割」とはどのようなイメージですか?

南山ハブのような役割ですかね。

例えば今の仕事だと、研究者の研究成果を公開して、一般の人たちにどういう研究が行なわれているかということを「つなぐ」ような役割もありますし、逆も当然あったりします。

それはいわゆる図書館の人だけによるものじゃなくて、もっといろいろな職の人たちが関わって作っていくところだと思いますが、その中で電子的なデータも含めた「資料」を中心につないでいくようなところが図書館の役割なのかなと、なんとなく思っています。

ただ、「図書館」というとどうしても「図書」に引きずられてしまうところがあるので・・・。

図書館の定義をもっと大きくとらえる...?

南山:「図書館」というよりは、もっと幅広く「ライブラリー」としてとらえて、それは研究者と一般の人をつなぐような「ライブラリー」でもいいですし、研究者と別の分野の研究者をつなぐような「ライブラリー」でもいいんですが、そのときに、ただつなぐだけではあまり面白みがないので、持ってきた情報になんらかの付加価値を付けてつなぐようなことがやりたい。

単なる個人的な希望ですが、そのあたりも今後の図書館の役割にできればいいなと思います。

最近ではオープンサイエンスなどのお話で外部で講演や執筆をする機会も増えてきましたね。

南山はい、いただける話があれば頑張って、なるべく断らないスタンスで(笑)。

インタビュー中の南山さん

誰かとつながって新しい仕事を作っていくことができる

最後に専門図書館で働くことを目指す人へのメッセージをお願いします。

南山専門図書館というだけあって、大学図書館とかと比べて分野が特化されているので、ある意味、魅力を発信しやすい場所だと思います。

例えば極地研だと極地に関する魅力を伝えるというのがあって、そうした自分たちの強みを持って、外に出ていけるんですね。

それと、うちの場合は研究所なので、研究者の方々と非常に近いところで話ができますし、人数が少ない分、決まった仕事をするだけではなく、研究者の方々や他の誰かと組んで、新しい仕事を作っていくということができる。

まさに南山さんのやりたいことですね。

南山はい。なので、ここでの仕事はとても面白いです。


これからも図書館関係のイベントなどでもお名前を見かけるであろう南山さんのご活躍をJcrossでも応援していきたいと思います。

なかの人たちのとある一日

8:30出勤
9:00メールとタスクを確認
10:00他部署や教員、スタッフとの相談打ち合わせ
11:00
11:30ILL対応
12:15昼休憩
13:00
13:30来客対応・会議出席・打合せ資料の作成など
   ⋮
17:00
17:30メールや郵便物の整理、情報収集
18:00事務処理(資料作成、日程調整など)
20:00帰宅
  • [※1]
    国立極地研究所学術情報リポジトリ
    https://nipr.repo.nii.ac.jp/
  • [※2]
    オープンアクセス
    インターネット上で論文などの学術情報を無償で自由に利用できるようにすること。
  • [※3]
    オープンサイエンス
    研究者だけでなく、あらゆる人々が研究データにアクセスしたり、様々な形で研究活動に参加できるようにする運動のこと。
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