お仕事見学

復旧だけでなく復興を!金剛株式会社の新工場をウパっちが直撃

掲載:2020年2月5日

第10回 金剛株式会社

金剛株式会社の機関誌「PASSION」とウパっち

ウパっちはとある企業図書館に住むウーパールーパー。

本を探してウロウロしていると、以前「お仕事見学」で訪問した金剛株式会社の情報誌「PASSION」が目にとまった。

熊本地震の特集号だ。

そういえば、熊本地震で被災した金剛株式会社も、新工場が稼働をはじめているって聞いた。

さっそく、ウパっちは新工場を見学させてもらうために、久しぶりに熊本まででかけることにしました。

2015年に訪問して以来、2度目の訪問となる金剛株式会社。

上益城郡嘉島町にある新工場へは、熊本駅からJR鹿児島本線に乗り換えて川尻駅で下車、駅からはタクシーで移動した。

2018年3月28日に落成式が行われた新工場は広々とした田園風景の中にある。周囲には金剛株式会社の工場以外にも、幾社かの工場が点在していて、新しく建設中の建物もある。

新工場は、建物の面積が1.2万㎡、敷地全体では約3万4千㎡におよぶ。

新工場の玄関写真提供:金剛株式会社

工場に到着すると、皆さんが出迎えてくださった。

今回お会いしたのは、常務取締役の中村さん、製造本部副本部長で工場長の浜田さん、管理本部副本部長の坂井さん、ガバナンス局長の倉野尾さん、社長室の村上さんと三木さんの6名。

中村さんは、前回の訪問時にもご一緒させていだたいて、ウパっちとは4年ぶりの再会となった。

「熊本地震のあとに工場を建てる場所を探し始めて、ここにちょうど良い土地を見つけることができました。最初は弊社の工場以外、このあたりは一面、田んぼでした。それ以降いろんな工場が増えてきましたね」

川尻駅から工場までは徒歩なら1時間以上かかる。バスなども走っていないが、社員の皆さんはどうやって通勤しているのだろうか。

「公共交通機関で通勤する社員は、川尻駅から工場までは会社負担でタクシーを使ってもらっています」

以前、ウパっちも訪問した旧工場は熊本市内、上熊本駅から徒歩数分の場所にあった。

「前は市内に工場があって、その近辺に住んでいる社員も多かったのですが、そこから市の中心街を越えてこちらに来るのはやはり結構時間がかかります。それで、引越しを希望する社員には会社から補助を出すことにしていて、すでにこちらに移ってきている社員も何人かいます」

フリーアドレスのオフィススペース

さっそく、建物の中を案内していただいた。

入ってすぐのところには、フリーアドレスのオフィススペースが広がっていた。こうした製造部門の現場でフリーアドレスを採用しているのは珍しいそうだ。

工場内のオフィススペース

ここで使われているテーブルも、自社で設計・製作したオリジナルとのこと。

「弊社は金属加工を主にしているので、設計から製作まで自分たちで全部できます。『モノづくり』ですね」

テーブルは木製の天板と金属製の脚によって構成されており、脚にはキャスターもついているのでレイアウト変更も容易にできるようになっている。

「設計という点では、品質を維持しつつコストを抑えて、製造工程もあまり複雑にならないようにと、製品に合わせて材料からいろいろと見直しています。例えば、この棚(下の写真)ですが、木製に見える部分は竹です。そして黒い金属の部分、これは普通は後から塗装するところをメッキを使っています」

熊本地震

2016年に発生した熊本地震では、短期間に震度7の地震が2度にわたって起こった。最初が2016年4月14日 21時26分、2度目が4月16日の1時25分。

金剛株式会社の工場にも甚大な被害が発生し、操業を止めざるを得なかった。

被災した当時の工場内の様子写真提供:金剛株式会社

「最初の地震があった翌日も多くの社員が工場に出てきてくれて、そのおかげで片付けも進みました。ただ、2度目の地震が来るなんて思っていなかったので、『何だったんだろうね...』と。せっかく片付けも進んだところでしたし、2度目の地震の方が大きかったので」

「余震もずいぶん続いていて、震度5くらいの揺れが1日に何度かという日もありました。復旧作業の最中も揺れるので、怖いと思うこともありました」

被災した当時の工場内の様子写真提供:金剛株式会社

東日本大震災を経験した社員を、東京や仙台などの拠点から呼び寄せるなどして対応にあたったという。

自社の工場が被害を受けたことで、予定されていた納期の変更をせざるを得ない状況に加え、顧客からの修理依頼も多く寄せられ、その対応に追われた。

「自社だけでなくお客様も被災されたので、営業としてはお客様の復旧を最優先に進めないといけません。まずは情報を集めるところから始めました」

免震の金剛

金剛株式会社といえば、業界でもいち早く地震対策、免震に取り組んできたことで知られる。

同社の免震装置付きの移動棚は、大きな揺れが発生すると、ロック装置が自動で解除され、車輪がレール上を自由に回転し揺れを逃すことができる。

1993年に発売されたこの移動棚は、その後に発生した阪神淡路大震災でもその性能を発揮し、多くの被害を未然に防いだ。

くまもと森都心プラザ図書館に設置されている移動棚

しかし、熊本地震では想定外の事態が起こった。

「移動棚を含め、免震書架は今回の地震においても大きな効果がありました。しかし、ご存知のように熊本地震の特徴は、大きな地震が2度発生したということですね。これが、思わぬ問題を引き起こしました」

1度目の地震では免震装置のおかげで移動棚の被害はなかったそうだ。しかし、一部の固定棚から落下した資料が移動棚のレールをふさいでしまい、それが原因で、2度目の地震では移動棚の動きが阻害され、資料が落下したり、棚が将棋倒しになるといった被害が発生した。

「予期せぬことでした。しかしこの経験があって、今後はこうした状況にも対応できるようにしないといけない、そういう思いで研究開発を進めています」

「固定棚から資料が落ちないようにするにはどうすればよいか。例えば、弊社の『傾斜スライド棚』を固定されている書架に活用してもらう提案などもさせていただいています」

傾斜スライド棚を見せていただいた

実際に、その「傾斜スライド棚」のデモンストレーションを見せていただいた。

写真の、向かって右側が普通の書架棚、左側が傾斜スライド棚。加振装置で揺れを加えると、通常の棚にある書架はすべて落下したが、傾斜スライド棚の方はそのままだ。

傾斜スライド棚のデモンストレーションの様子

傾斜スライド棚は、平時は通常の棚と同じ状態だが、揺れが発生すると棚板がスライドし、手前から奥に向かって傾斜する。これによって、資料の落下を防ぐようになっている。

傾斜スライド棚を取り付ける様子

「傾斜スライド棚は通常の書架に設置することができます。落下の危険が少ない書架の下層はそのままにして、上層の2段か3段のみを傾斜スライド棚に変えるということもできるので、導入もしやすいと思います」

未来志向型の生産システム

いよいよ新工場の中、生産現場を案内していただいた。

落成後、工場は新しい塗装設備から稼働を開始した。その後、生産設備を旧工場から順次移設または新設し、2018年11月から本格稼働している。

「前の工場は随分と老朽化していましたので、それが地震で被災して、『復旧だけやっていてもしょうがない。復興をしよう』ということで、新しく工場を建てることにしました」

工場内の全景

未来志向型の生産システムが導入され、ロボットによる生産の自動化を促進、IoT技術を駆使し、生産工程の管理や可視化を実現しているという。

工場長の浜田さんに工場内を案内していただいた

工場内を見渡すと確かに人影があまり見当たらず、ほとんどの社員の方は工場内が見えるオフィスエリアで仕事をしていた。

「セキュリティカメラで状況はわかるようになっていますし、何か障害が起きればすぐにメールで通知がくるようになっているので、工場から離れていても状況が確認できます」

ロボットが稼働している様子

真新しい工場の中でロボットが休むことなく作業を続け、その音だけが響いている。ウパっちもその様子に見入っていた。

工場を見ているウパっち

「モノづくり」の面白さとは

金剛株式会社の強みとは何か、聞いてみた。

「熊本地震がありましたが、それで会社の方針が変わったということはありません。地震対策に取り組んできたのは、この業界でも早かったと思いますし、ノウハウもあります」

「弊社の製品はやはり頑丈だと思います。これも地震対策に取り組んできたひとつの成果ですね。その分、多少コストは高いかもしれない。でも『頑丈』ですよ」

モノづくりの面白さってなんだろう?

「今まで取り組んだことのないもの、技術的に難しいものとか、新しい材料とか、そうしたものを皆で何とかしようとして、それが実際の製品として出来上がっていくのは楽しいですね。モノづくりの面白さを実感します」

「板金の技術はいろいろあって、アメリカあたりだとこんなことをやっている、みたいなのが、ネットで動画が見られたりします。他にも、展示会で『これ、どうやって作っているんだろう?』というような複雑な加工技術を見かけることもあります。そういうものにもどんどん触れて、技術を高めていきたいですね」

職業柄、普段から什器や家具を見かけるとつい仕事目線になってしまうらしい。

「テレビドラマなどで、背景に家具なんかが映っているのを見て、『あ、ウチのだ』とわかったりするとついついそっちに目が行ってしまいますね」

ぱっと見て「金剛株式会社の製品」とわかる印のようなものはあるのだろうか。

「ないですね。でも、見れば自社の製品はわかります(笑)」

「本屋に行ったとき、当たり前ですけど、普通の人は本を見ているじゃないですか。でも、こういう仕事をしていると什器の方が気になってずっとそればかり見ていたり(笑)」

ロボット化が進み、人間では困難な加工もできるようになってきたという。その分、今までできなかったようなことにも挑戦していきたいとのこと。

「現場にはプレッシャーが(笑)。『なんでも作れるんだろう?』と(笑)」

最近は、画一的なイメージの図書館ではなく、独創性のある様々な図書館が増えてきている。例えば、2018年4月にリニューアルした宮崎県の都城市立図書館。こちらの書架・家具類は金剛株式会社が対応した。

「こうした図書館は設計事務所さんのいわば作品のようなもので、ひとつひとつ全部違うんです。同じものがありません。都城さんでも、書架の鉄板の部分の風合とか、今までやったことのないような塗装を工夫したりもしましたし、このあたりは設計事務所のデザイナーさんとの共同作業ですね」

「弊社は図書館そのものを設計するわけではありませんが、その中に収める什器や家具類を、その使い方、配置の仕方も含めてどうするか。製品を作って終わりではなくて、最初の段階からヒアリングをしながら進めていきます」

金剛には、構造計算の担当なども含めて30名ほどの設計デザイン担当者がいて、製品の設計はすべて社内でやっているそうだ。

「デザインにも力は入れていますし、もちろん図書館にも詳しい社員がいます。だから、図書館家具一式、什器からチェアまですべて含めて対応できるようにしています」

熊本県ブライト企業

ふと見ると、皆さんの襟元にくまモンのピンバッジがついている。

ブライト企業のピンバッジ

「これは、熊本県が推進する『ブライト企業』のピンバッジですよ」

熊本県は、「働く人がいきいきと輝き、安心して働き続けられる企業」として認定要件を満たした地元企業を「ブライト企業」に認定している。

金剛株式会社はこの「ブライト企業」の第一号認定先として、他の39社の企業とともに選ばれたそうだ。

旧工場の今

帰り際、以前の工場の現在の様子を映像でみせていただいた。解体の様子なども含め、写真や映像で記録しているそうだ。

旧工場の解体の様子を写すモニター

「今、解体に着手していますが、もう7割くらい終わっています。2019年9月の終わりまでには更地になる予定です」

(向かって左から)坂井さん、村上さん、浜田さん、中村さん、三木さん、倉野尾さん

草千里ガ浜で記念撮影するウパっち

久しぶりに熊本にやってきたウパっち。

せっかくの機会なので、今回は阿蘇の草千里ヶ浜まで足をのばしてみた。

雄大な風景に圧倒されながらウパっちは思い出していた。

「復旧だけでなく復興を」

熊本地震という大変な経験から、新工場とともに新しい一歩を踏み出した金剛株式会社。
皆さん、自分たちの「モノづくり」に自信をもっていい笑顔をしていたなぁ。

本記事の内容は取材時(2019年9月)のものです。
会社情報
金剛株式会社
工場
所在地
熊本県上益城郡嘉島町大字上仲間字八津1825番地
TEL
096-237-5111
熊本本社
住所
熊本県熊本市西区上熊本3丁目8-1
TEL
096-355-1111
URL
https://www.kongo-corp.co.jp/