カツ
絵本専門士ユニット Eighth color
第26回図書館総合展2024ポスターセッションへの出展者賞としてブレインテック賞をお贈りした絵本専門士ユニット Eighth colorを紹介します。
絵本のスペシャリストである絵本専門士たちが結成したユニット『Eighth color(エイスカラー)』
個性も才能も住む場所も様々なメンバーがどのような活動をされているのかお話を伺いました。

- 名称
- 絵本専門士ユニット Eighth color
- 発足年
- 2023年
- 人数
- 11名 ※2025年5月時点
- ウェブサイト
- https://www.facebook.com/eighth.color.ehon
第26回図書館総合展ポスターセッションへの出展者賞として、Jcrossを運営するブレインテックからブレインテック賞を受賞した絵本専門士ユニット Eighth colorさん。
ポスターセッションの会場でもたくさんの方が足を止めて注目している様子がうかがえました。
授賞の理由として、ポスターの色味がきれいで目を引いたこと。活動内容がとても分かりやすくまとまっているのはもちろんのこと、その場で即興で絵本の紹介をするパフォーマンスが印象的だったことなどがありました。そして、Eighth colorのメンバーの方々がとてもエネルギッシュで、絵本専門士ってすごい!どういう人々なのだろう?Eighth colorの皆さんがどのような活動をしているのかもっと知りたい!と興味を持ちました。
2月にブレインテック本社多目的スぺースtekute crossにて行われた授賞式の後、Eighth colorの代表咲間さんと、ご都合をつけて来てくださったメンバーの大木さん、近藤さん、雪竹さんにお話を聞くことができました。
授賞式の様子はスタッフブログをご覧ください。
絵本専門士って?
絵本専門士とは、絵本に関する高度な知識、技能及び感性を備えた絵本の専門家で、国立青少年教育振興機構が管轄している教育事業の一つです。
絵本専門士になるには、絵本専門士として必要な3つの領域
「知識を深める」、「技能を高める」、「感性を磨く」を身に付けるための講座をおよそ1年かけて受講する必要があります。
認定を受けた後は、読み聞かせやワークショップなどの運営、絵本に関する指導や助言、人的・物的コーディネイト等、絵本専門士として幅広く活動することができます。
Eighth color始動@図書館総合展
まずは結成の経緯を教えてください。いつ頃、どのような経緯で発足したのですか?
咲間絵本専門士に認定されて1年経って、その後ブラッシュアップしていく場所がなかったんです。みんなで高め合い、いろいろと共有しながら勉強していける場が欲しいと思った時、図書館総合展を思い出しました。
図書館総合展には何度か行ったことがあるのですが、出版者が絵本を紹介するコーナーはあっても、「絵本」に特化した「絵本」そのものを扱う出展はあまりありません。
そこに、私たち絵本専門士が入ったらどうなるかな?と思ったのがきっかけで、図書館総合展に出ることを決意しました。
図書館総合展ってやっぱり図書館関係の人々が一堂に会して交流できる場なので、出展することで幅広くたくさんの方々に「絵本専門士」を知ってもらうことができるのでは?と考えたのです。
そして、出展するなら一緒に切磋琢磨し合いながら活動するメンバーを募ろうと思い、同期の大木さんたちに声をかけてEighth colorを結成し2023年の図書館総合展に出展しました。
2024年図書館総合展のポスターセッションの様子
結成から出展まですごいスピード感です。その後新たなメンバーはどのようにして募ったのですか?
咲間新たに加入するにはメンバーからの紹介が必要です。イベントなどで知り合いになってこちらからスカウトすることもあれば、入りたいと声をかけてくれる人もいます。誰でもWelcomeではなく、メンバー全員で楽しく情報や知識を共有して高め合うためにも自ら発信する人に参加してもらいたいと思っています。
Eighth colorの名前の由来は何ですか?メンバーが8人というわけではないのですね?
咲間はい、よく言われますが、人数ではありません。
「Eighth color」のメンバーは個性も背景も経験もそれぞれ豊かでいろんなものを持っています。それぞれ持ったカラーが虹の7色に収まらない8番目の色を放つという意味で「Eighth color」としました。
そして私含め最初のメンバーは8期生なんですが、だから8というわけでもなく、偶然です。
図書館総合展ではポスターセッションだけでなく、スピーカーズコーナーでもイベントをされていましたね。
咲間スピーカーズコーナーのイベントでは、当日会場に足を運べる各メンバーが絵本の紹介を行いました。
雪竹私は第9期の絵本専門士の認定を受けて、その年、2023年の図書館総合展で絵本専門士の先輩方が出展されると聞いたので見に行きました。
スピーカーズコーナーを聞きに行ったのですが、その時は会場に人がいっぱいで・・・。
気が付いたら資料の配布をしたり、誘導をしたりとお手伝いをしていて、それがきっかけでそのままメンバーになりました(笑)。
Eighth colorの活動~ユニットだからできること
全国各地にいらっしゃる皆さんですが、定期的に打合せや集まる機会などはあるのですか?
咲間月に一度オンラインで定例会議を行っています。
図書館総合展などのイベントがあればその打合せがメインとなりますが、議事に沿って、運営について話し合ったりするのと、今だと、”絵本とどのようにして関わることになったのか”をテーマにメンバーが持ち回りで話しています。
イベントやワークショップなどの企画があればその内容を相談したり、リハーサルを行ったりもしています。
大木イベントで開催したワークショップや講義などをもう一度やってもらって、メンバーで意見を出し合って更にブラッシュアップすることもあります。
1人では難しいこともユニットだからこそ、皆で意見を出し合ってブラッシュアップしてよりよいものを作り上げることができるのですね。
近藤メンバーそれぞれ学校司書だったり、公共図書館だったりと専門が違います。だからこそ、学校司書の私には当然のことが、公共図書館の大木さんには分かりにくいこともありました。その点を的確に指摘してくれるので「そうかー」と気づきがあって、とてもありがたいです。
皆さん本業がありながらもそのような時間はどのように作り出しているのですか?
咲間何かしながら耳だけ参加していることもあります。平日の夜、ひととおりの家事や用事を済ませた時間帯の開催が多いので、お風呂上りのすっぴんで、リラックスした状態で参加しています。オンラインのいいところですね。
皆さん気心が知れている間柄だということがよく分かります。Eighth colorとしての活動はどのようなことをしていますか?
大木実は私たちユニットとしては読み聞かせはあまりしていないので、そういう意味ではちょっとイメージと違うと感じられるかもしれませんね。
近藤もちろん、個人として読み聞かせは行っているのですが、ユニットとしては出張講座や講演、ワークショップなどをメインに行っています。
最初に参加した図書館総合展のポスターセッションを見て、Eighth colorとしてこういった講座はできますか?といったご依頼を受けることが増えたので、私たちのなかでも図書館総合展への出展は大きな意味がありました。
また、最初の図書館総合展では「絵本専門士って何ですか?」と聞かれることがとても多かったのですが、2回目になるとその質問が少なくて、絵本専門士を知ってくださる方が増えた印象があります。
レポート提出は23:55(認定までの奮闘記)
絵本専門士の認定講座は、希望すればだれでも受講できるわけではなく、受講するための選考があります。司書や保育士、教員の有資格者や絵本の研究者や作家や編集者など、絵本に関する一定の知識や経験が必要です。
選考は年に一度で、定員は70名。応募者数は公表されていませんが、年々増えているそうで、Eighth colorのメンバーの中でも2度目、3度目で選考を通過したという方もいらっしゃるくらい狭き門となってるようです。
認定を受けるまでは大変でしたよね・・・?
咲間認定講座の講義自体は2か月に1度、土日を通して開催されますが、講義を受けるだけではなく、レポートも提出しなくてはなりません。
当時、レポートの提出はその日の0時までとなっていたので、帰りの電車でやっている人がほとんどでした。
私は東京の会場まで片道3時間ほどかけて通っていたので、講義が18時に終わり、21時過ぎに帰宅して23時55分とかにレポートを提出、シャワーを浴びて寝て、翌日6時くらいにまた家を出るような状況でしたね。
自分ではそのつもりは無かったのですが、かなり殺気立っていたようで、家族からは次は会場内にある宿泊施設に泊ってくれと頼まれました(笑)。
近藤その日の講義のレポートの提出もあるし、事後課題や次の講義までの事前課題もありました。振り返ると1年を通じた学びだったなぁと思います。
平日はお仕事をしているにもかかわらず、週末にそのような試練を乗り越えてこられたのですね。それ以外にも絵本専門士の養成講座で印象に残っていることはありますか?
雪竹最初の授業で「とにかく1日1人に絵本専門士になる勉強をしていることを話す。なってからは、なりましたと名刺を配る。そうすることによって、あなただけでなく、絵本専門士全体の知名度が上がる。人と人とのつながりが大事」ということを教えられました。
実際に1年で500枚配ったんです。そのことを先生に言うと、本当にやったのかと驚かれ、褒めてもらいました(笑)。
咲間絵本を読む人というと、ボランティアという感覚がどうしても強い印象があります。ただ、講義を受ける中で、私たちはボランティアではなくきちんと報酬をもらえるような仕事をしなければならないというマインドを厳しく教えられました。そうはいってもなかなかボランティアから抜け出せない現実があります。お金を出してもらえるような活動をしたいから、そのためにも学ばないといけない。その仕掛けとしてこのようにお互いに学び合い、高め合っていくためのユニット活動が大切だと思っています。
また、Eighth colorの活動を通じて、私たち「絵本専門士」が何ができるのかを伝えていけたらと考えています。
豊かな読書文化を守りたい
皆さんそれぞれがどのようなことを大切にして活動されているのかなど教えてください。
雪竹絵本だけでなくその後の読書までつながるのが大切です。
本の力を信じて、本で世界とつながる、本で人と人がつながるをコンセプトとして個人でも活動しています。
近藤学校司書やボランティアとして読み聞かせの活動も行っていますが、一番は「絵本って、本って楽しいんだ」と思ってもらえる絵本を届けることです。
「本嫌い」という言葉を聞くことがありますが、それには理由があると思います。
本の世界が楽しいということを伝えられたら「本って楽しいんだ」と感じてもらえるので、そうなることを祈っています。
大木「本がおもしろいんだもん」って言う人が少子化でどんどん減っていって、先細りであることが目に見えているので、そこに危機感を覚えています。
本に関心がある層を広げないと読み手も書き手も人が減って、豊かな読書文化が廃れていってしまいます。
せっかく図書館があるのだから使ってもらいたくて・・・
お金があって本を買えるごく一部の人だけの知の独占になってしまってはいけないなと思っています。これまで自分たちが享受していた「本を読む楽しみ」みたいなものを次の世代にも残したいです。残せないと申し訳ないし、いやだなぁと思い、本を通じた仲間たちを増やそうとしています。これからの子どもたちが本を楽しめる環境を整えていきたいです。
壮大な話になってしまいましたが、それを目指してまずは身近なところから読書を広めるような活動をコツコツと行っています。
咲間私の言いたいことはすべて皆さんが言ってくれました(笑)。
読書をする層はかなり先細りになっているのは間違いないです。絵本は人生で最初に出会う本であって、読書のスタートラインだと考えています。
今の子どもたちはスマホ、タブレット、動画に慣れていて、読書の力、短期集中力が落ちていると感じています。このままだと本の文化が無くなってしまうので、紙の本の素晴らしさを伝えたいです。
そうすることによって作家、出版社を守ることにつながると思います。どんなにすばらしい絵本でも購入されて読まれないと絶版になってしまいますから。
版を重ねて生き残っている本もあります。世代を超えて残っている本を次の世代へつなげるのが私たちの仕事のひとつだと思っています。
それぞれの想いを聞かせてくれてありがとうございます。Eighth colorとして今後力を入れていきたいことなどを教えてください。
咲間私たちの強みは司書、保育士、教員等、それぞれに地域も専門も違うメンバーが集まって、それぞれのフィールドを共有していることです。
絵本専門士の仕事は待っていてもなかなかやってきません。私たちにはどういうことができて、どういう人がいるんだということをもっと発信して行かなければいけないと思っています。絵本専門士としての活躍の場を広げていきたいのですが、普通に生活していたらアピールする機会自体がなかなかありません。ですので図書館総合展などの機会を通じて自ら売り込むということをこれからも続けていこうと思っています。
そのためにも私たち自身が学び続けなければいけないので、多彩なメンバーが集まった私たちの強みを生かして、引き続きこのようなユニット活動を通じて学び合うということを続けていきたいです。
お話を聞いて・・・
「絵本専門士」の認定を受けてからも学ぶ場を求めて発足されたEighth colorというユニット活動。絵本の読み聞かせはユニットとしてはほとんど行わず、メンバーの多彩かつ多才なカラーを持ち寄り高め合い、切磋琢磨しながら、それぞれのフィールドで絵本を介したイベントや読書を広める活動を行い、また共有するというサイクル。
本の力を信じて、本で人と世界を繋げることを目指している皆さん。
さらに読書人口を増やすことによって出版界、作家も支えたいという広い視点を持っていることに驚きました。
それぞれに本業を持ちながらも学ぶことを追求し続ける皆さんはやはりエネルギッシュでした。絵本の話をする時、皆さんの目がキラキラしていたのが印象的です。
Jcrossとして、これからもEighth colorの皆さんの活動を応援していきたいと思います。
前列左から 雪竹さん 近藤さん 後列左から Jcrossスタッフ秋葉 咲間さん 大木さん
文/秋葉小夜子 (株式会社ブレインテック Jcross担当)