レポート
SLiiiCサマー・ワーク・キャンプ2015
2015年9月12-13日にかけて行われた学校図書館プロジェクト・SLiiiCの「SLiiiCサマー・ワーク・キャンプ2015」1日目に参加してきました。
SLiiiCは、学校現場で働く学校図書館員(学校司書等)と学校図書館やWebに関心のある学生・研究者が協力、学校図書館に携わる人々の支援を目的とした団体です。SLiiiCについては、以前このJcrossでも紹介しています。
SLiiiCでは、毎年、「サマー・ワーク・キャンプ」と題した会合を開催し、学校図書館関係者などが参加して、ワークショップや講演会を開いているとのことです。学校図書館に興味があれば誰でも参加可能と聞き、図書館の人たちと話す機会になるかなと思い、今回のサマーワークキャンプに参加してきました。
主催者からの報告などは下記のリンクからご覧ください。
会場は東京都調布市にある白百合女子大学です。木漏れ日の中を歩いて講義棟へ向かいました。
当日は調布で震度5強を記録した地震が発生したため開始が少し遅れましたが、60名ほどの参加があったようです。
まずはSLiiiC代表の横山寿美代さんから、「学校図書館と生涯教育」という今回のテーマについてお話がありました。
そのあと、大田区立大森南図書館で勤務されている司書の高井陽さんが紹介されました。
登壇した高井さんは、まずは持参のパペットを使ったショートコントを披露、会場からも笑い声が起こり、柔らかい雰囲気となった中、講演が始まりました。
まずは、高井さん自身がこれまでに関わった図書館についてのお話でした。学生時代に利用していた学校図書館での体験や、社会人になって学校図書館と公共図書館の両方に勤務されているお話などがありました。特に高校時代には図書委員として比較的自由な活動が認められていたとのことで、楽しい思い出もたくさんあったとのことです。
高井さんは「学校図書館と公共図書館はつながっているのではないか」という考えをお持ちとのことです。これは、長い時間を学校図書館で過ごしながら学んだ多くのこと(例えば他人とのコミュニケーションや、自分を表現することなど)が、社会人の今となっても活きていて、なおかつ、それらが生涯学習で得られるものや学ぶことができるものと同じであると思えるからだそうです。
そして、学校図書館と生涯学習との関係を、「教育機関である学校図書館は生涯学習機関の一部であり、社会への接点でもある」と定義し、大人になっても図書館を使おうと思ってもらうことが学校図書館の目指すところではないかというお話でした。また、学校司書の方々については、その仕事をする姿を見せることで生徒の社会へ出ていく際の水先案内人となる立場にあること、1人職場や対人関係などの悩みもあるだろうが、外に出て学ぶことが大事であること、交流するためにも名刺を作って人と繋がっていくといいこと、などのお話がありました。
参加者からの質問にも、ご自身の体験をもとにしたエピソードが紹介されました。例えば、学校図書館勤務時代にはあえて「本を借りよう」とは言わなかったが、高井さんが図書館の整備や居心地の良い場所を作る過程を見せることで図書館に通う生徒が増えたというお話や、サッカースタジアムに図書館員が出向いて、そこでオフサイドなどのルールがわからないと話していた人にわかりやすい資料を紹介したというお話です。これらのエピソードには、会場からも感嘆の声が上がっていました。
午後は大学図書館の図書館サークルの紹介が行われました。この日は都留文科大学の図書館サークルであるLibropassと、白百合女子大学の図書館ピアサポーターLiLiAの2つのサークルが紹介されました。
まずは都留文科大学 図書館サークルLibropassの活動報告です。
早朝に起きた地震のために電車が遅れたとのことで、サークルのメンバーはまだ到着していなかったため、都留文科大学の日向良和准教授からサークル活動についてのお話がありました。スタンプラリーやビブリオバトル、オープンキャンパスでの図書館紹介など、様々な活動内容を行っているということが、スライドを使って発表されました。日向准教授は、このLibropassの活動は、学校図書館のサービスの成果でもあるとお話されました。これは、これまで学校図書館で様々なサービスを受けたメンバーが、今までの経験を活かしてLibropassで活発に活動している様子を見てそう感じたとのことでした。この言葉に先ほどの高井さんの話がシンクロして聞こえました。
途中で到着したサークルのメンバーからは、サークル活動で作成したしおりが配布され、私もいただきました。
続いては白百合女子大学の図書館ピアサポーターLiLiAが紹介されました。LiLiAは、以前このJcrossでも紹介記事が掲載されていますので、あわせてご覧ください。
LiLiAでは、学園祭での企画や図書館での企画展示、発行誌である「LiLiA TIMES」の紹介の他、図書館総合展へのポスター展示などを行っているというお話がありました。
なぜLiLiAに入ったかという参加者からの質問に対して、メンバーからは、「司書になりたい」「図書館が好き」「本が好き」「サークル紹介で興味を持った」など、もともと本や図書館に親しみを持っていたと思われる理由が多くあがりました。大学入学前から図書館を利用していたメンバーが多いのかなと思いました。これも学校図書館の成果といえるのではないでしょうか。
この後、LiLiA企画「POPをつくろう」も行われました。LiLiAの皆さんも普段からPOPを作っているとのことで、参加者に混じって一緒に作成していました。
私は初めてPOPを作ってみたのですが・・・。とても難しかったです。自分が持参した本なのでお勧めしたい理由などは思い浮ぶのですが、それをPOPとして表現できなくて歯がゆかったです。作るのは見ているよりずっと難しいものなのですね。
他の方を見ると、印象的なシーンの絵や言葉を取り入れたり、色を使ったりと、難なく目立つPOPを作られていました。また、自立させたり本の表紙に引っ掛けるようなポケットを付けていたり、と実際に展示する場所にあわせたアイデアも紹介され、奥深さも垣間見ました。思わず見入ってしまうようなPOPが目の前で手際よく作成される様子に、感心することしきりでした。
POP作成のあとは、Librospass進行での「ビブリオバトル」が行われました。
ビブリオバトルは、バトラーと呼ばれる発表者が紹介したい本のアピールし、それらを聞いた参加者はどの本が一番読みたいと思ったかを投票するゲームです。バトラーは5分で本を紹介し、その後参加者とのディスカッションを2分ほど行ってから、次のバトラーに交代するというルールがあります。
LibrospassとLiLiAメンバーの中から合わせて5人がバトラーとして登壇しました。
ビブリオバトルに慣れている人も初めての人もいたようですが、この本のどこが好きなのか、なぜお勧めしたいのか、など、持ち時間の中で自分の言葉で一生懸命に伝えようとしている姿を見ると、聞いている側も胸が熱くなり、どの本にも興味がわいてきてどれも読みたくなってしまいました。参加者からの投票結果も接戦で、皆さん楽しんでいたようです。
今回のSLiiiCサマー・ワーク・キャンプ2015に参加したことで、私をはじめ多くの人の図書館の原点は学校図書館であるということに改めて気づきました。そして、そこで心地よい経験が得られれば「図書館は楽しいところ」というイメージとなり、生涯を通じた様々な学びの中で図書館が使われていくんだなと認識することができました。
レポート/赤枝 幸子 (株式会社ブレインテック Jcorss担当)