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レポート

東洋文庫主催『図書館展示入門ワークショップ』

掲載:2019年12月9日

公益財団法人東洋文庫による「図書館展示入門ワークショップ」が、図書館総合展展示会場内の「メーカーズ・ラボ」にて2019年11月12日に開催されました。当日の講師は東洋文庫の岡崎礼奈様と篠木由喜様でした。

東洋文庫は、東洋学研究のための専門図書館・研究機関です。利用者の多くは研究者とのことですが、2011年に東洋文庫ミュージアムが開館したこともあり、研究者のみではなく一般の人にも広く東洋文庫について知ってもらえるように、所蔵する資料をテーマに合わせて展示するテーマ展示を開催されているとのことです。

岡崎礼奈様と篠木由喜様

ワークショップの前半では、展示を行う目的やテーマの決め方といったお話と、展示に使用する機材や展示で使われる説明書きのパネルについて、気をつけていることなどのお話を聞くことができました。

東洋文庫では年に3回ほど展示替えがあるそうですが、展示の1年半前から、展示のメインテーマ決め、全体の構成を考え、展示対象の資料を絞り込み、広報物の作成、展示に必要な補助具の作成・・・といった作業が始まるとのことです。複数の展示とその準備が並行して行われており、展示の企画や設営と、ミュージアムの運営に関わるチームを分けているとのことでした。

また、東洋文庫の展示の特徴は、資料を開いた状態で展示していることです。これによって表紙だけではわからない情報を伝えることができます。ただ、貴重書を長い期間展示することになるので、例えば開きすぎると背表紙が割れてしまったり開き癖がつくなど、資料を傷めてしまう原因にもなります。資料を極力傷めないよう、開く角度など配慮する必要があるとのことでした。

展示資料に添えるパネル作成のポイントについてもお話がありました。文字の量に気を使い、平易な説明文で記載すること以外に、鑑賞者の持っている知識に新しい情報を追加できるような内容を記述する、といった点にこだわっていらっしゃるそうです。

後半では資料を開いて展示するための展示用の補助具と、説明用のパネルを実際に作成しました。参加者は4つのグループに分かれ、用意された資料のサイズを測って、補助具であるクレードルを作成したり、その資料の紹介文をパネルにしたり、といった作業を体験しました。

用意された材料は実際に東洋文庫で使われているものだったので、その入手方法や、その材料を使うコツといった具体的なお話を聞きながら、作業は進められました。

資料を開いて置くための補助具(クレードル)作成

説明パネルの作成

完成品

資料に合わせたサイズの補助具に広げられた資料は、見やすく興味を惹きます。また、展示パネルでは資料のタイトルの他に「キャッチコピー」を入れることで、関心を持ってもらうことができます。これはそのままPOPにも活用できそうです。

30人ほどの参加者が、岡崎様や篠木様の一言一言を熱心にメモを取っていて、終わった後もいろいろな質問を投げかけていました。講師の側も、参加者の側も、展示を少しでも良くしたいという気持ちのあふれた会場でした。

文/赤枝 幸子 (株式会社ブレインテック Jcross担当)