レポート

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神奈川県立川崎図書館の「あゆみ」に注目

掲載:2017年9月4日

神奈川県立川崎図書館(以降、川崎図書館)では、開館当初から展示に力を入れており、これまでに多くの展示を開催してきました。2017年5月12日からは、開館60周年を間近に控え、これまでの川崎図書館の歴史を振り返る、ミニ展示:「川崎図書館あゆみ展」が開催されています。

今回の展示を担当したスタッフの一人、科学情報課の高田高史様に展示の様子をご案内いただきながら、これまでの展示についてのお話も伺いました。

川崎図書館のあゆみ展の様子

川崎図書館では、2017年4月末時点での入館者の累計が9,922,497名となり、間もなく1000万人を迎えようとしています。また、2018年5月には現在の川崎区から高津区の「かながわサイエンスパーク(KSP)」への移転[※1]が予定されており、開館60周年以外にもいくつかの節目を迎えつつあります。

そうした中、来館した方に川崎図書館のことをもっと知っていただきたという意図に加え、この機会にこれまでの歩みをまとめておきたいというスタッフの皆さんの思いもあって、この展示の企画が実現したとのことです。

川崎図書館は1959年に開館します。当初、神奈川県では川崎図書館を「純然たる工業図書館」とする構想を持っていましたが、所在地である川崎市が一般の公共図書館を求めていたことを受けて「工業を中心とした公共図書館」としてスタートします。

その後、川崎市立図書館の整備が進んだことを受けて、1998年に現在の「科学と産業の情報ライブラリー」の愛称の元、自然科学・工業・産業分野に特化したライブラリーとしてリニューアルしました。

川崎図書館での展示は開館したその年から始まり、第1回目のテーマは「アメリカ児童絵画展」でした。

開館以降、今日まで変わらず展示を重視する風潮が引き継がれていきますが、高田さんによれば「初期の展示は、スペースも広く、工業や産業関係のものを含め、いろいろなテーマで催していました。多くの方に新しい図書館を知っていただこうというPR的な要素も強かったと思います」とのことでした。

第1回の展示の様子を伝えるパネル

今回の展示ではその準備にあたって、イメージに合う写真がなかなか見つからなかったり、昔作成したグッズが残っていても、それがいつ頃作成したものかわからず調べるのに苦労したりもしたそうです。

しかし、そうしたことを通じて、結果として図書館としてのアーカイブズの必要性を認識することができたり、また、開館当初から展示に力を注いできた図書館であることを、スタッフ自らがあらためて確認することもでき、「私個人としては、先人の苦労があって今日の当館がある、という流れを知ることができてよかったです」とのことでした。

過去のグッズが展示されている様子 1990年のこどもの日にプレゼントしたレモン色のバッグ
右端の写真にはおはなし会の様子をみることができ、児童サービスにも力を入れていたことが伝わります

これまでの歴史を振り返るという主旨から、かつて活躍していた図書館の目録カードケースを会場に置くなど「懐かしさ」を感じさせる演出も随所に見られます。

目録カードケース

世代によっては古い川崎図書館を知らない来館者もいるため、より多くの人に親しんでもらえるように会場には簡単なクイズを用意したり、復刻版の利用案内を配布するなど展示を楽しむ工夫がなされていました。

今回の展示の一部である「来館者累計1,000万名への階段」もそうした工夫のひとつで、階段を使うという面白いアイディアを実現しました。

しかし、今回の展示の準備を進める中で、同様に階段を使った表示が1988年にすでに行われていることがわかり、高田さん自身、その当時の写真を見つけた時は驚いたそうです。

「ここでは、展示会場への階段を昇りながら、入館者が1,000万人に近づいていくことを感じてもらいたいと意図しました」と高田さん。「階段に立ち止まってじっくり見るような表示にすると危ないので、感覚的に理解できるものがよいと思いました」

来館者累計1,000万名への階段 「来館者累計1,000万名への階段」

1988年の展示の様子 1988年の階段を使った表示の様子を伝えるパネル

川崎図書館では展示を担当する部署があるわけではなく、司書のいる事業部の3つの課で順番に担当しており、その担当する課が原案を出して次年度の活動を考える際に具体的な展示内容などを決めているそうです。

ここ数年は3、4か月ごとに展示替えが行なわれていますが、展示を開催するにあたっては、もっと深く展示のテーマを知ってもらう目的で、展示と併せて関連する講演会を開催したりもしています。これは同時に、展示を広報の一環として考えると、話題性をもたせることにもつながっているとのことでした。

また、川崎図書館の展示は、いつも本以外に関連する模型やグッズを並べたり、キャプションなども多用しています。キャプションはすべてスタッフが手作りし、本以外の展示品は団体や企業から借用したり、提供してもらっているそうです。

「図書館なので、調べるためのツールには事欠きません」と高田さんは話します。「展示の準備で調べたことが、レファレンスなどで役に立つこともあります。経験を積むことで、展示のノウハウも蓄積されている気がします。担当する課によって、なんとなく展示の雰囲気が違うのも面白いです。私は”あまり手間をかけすぎない”という点にも留意しています」

展示の工夫やアイディアは基本的には、担当者を中心に決めていて、時事的な話題であったり、資料の紹介を中心にしたものだったり、まちまちだそうです。準備は担当する課のスタッフ全員で分担しますが、楽しんで取り組めるテーマだと、いろいろなアイデアが次々に出てくるそうです。

「来館者のニーズを踏まえた展示とすることはもちろんですが、自分たちが興味を持てそうなテーマを選ぶことも大事」とのことでした。

展示の様子 これまでに開催されたミニ展示の様子を伝えるパネル

借用した展示品等はやはり見栄えがするため、どうしてもそちらが注目されがちですが、展示においては、あくまで「図書館の主役は資料」だということを重視しているとのことで、どういう展示にしたら資料の利用に結び付けられるのかを常に考えているそうです。

以前に開催された「雑誌にみるパソコン進化の歴史」では、川崎図書館の書庫に1980年代前後からのパソコン雑誌があることを知ってもらう目的で開催したそうで、「当館では、会場や設備の制約もあり難しいのですが、本はケースに入れて眺めるものではなく、本来的には、直接、手にとってご覧いただきたいと思っています」とのことでした。

さて、高田さんにこれまでの展示で思い出に残っている展示を伺うと、「読む 知る 感じる 夢見ケ崎動物公園」との回答でした。

「読む 知る 感じる 夢見ケ崎動物公園」は、川崎市立の動物園とタイアップして2013年に開催された展示で、「取材などで足を運んだりして、これまでの展示以上に、同じ課のスタッフも楽しんで準備に取り組んでいたように思えました。それが企画者として何より嬉しかったです。ホームページでのPC用の壁紙の配布、飼育員さんたちのお薦めの本の紹介、高校生対象の関連講演会の開催、その他、いろいろなアイデアを盛り込めました」 とのことでした。

それ以外では、ANAやJALの協力を受けて開催した「図書館空港 空を飛ぶ技術」も印象に残っているそうで、「その展示で出たアイデアを、他の展示や、展示以外の機会でも活用することができています」とのことでした。

また、川崎図書館は、全国でも屈指の社史のコレクションでも有名ですが[※2]、その社史を紹介した展示「社史にみる企業キャラクター」も高田さんにとっては印象的な展示とのことで、現在、社史を使った様々な企画や催事に関わる高田さんにとっては、これが本格的に社史を知るきっかけとなったそうです[※3]

お話をうかがった科学情報課の高田さん
手にしているのは川崎図書館のキャラクター「かわとくん」

ミニ展示:「川崎図書館のあゆみ展」は2017年9月30日まで開催です。

取材/秋葉小夜子 (株式会社ブレインテック Jcross担当)

  • [※1] 川崎図書館は2018年5月に「かながわサイエンスパーク(KSP)」(川崎市高津区坂戸三丁目2番1号)への移転を控えています。移転に関する詳細はこちら(PDFファイル)をご覧ください。
  • [※2] 川崎図書館では年に1度社史フェアを行っています。前年に刊行され、所蔵している社史が一堂に並び、すべて手に取って閲覧できます。
  • [※3] 参考資料:「社史の図書館と司書の物語―神奈川県立川崎図書館社史室の5年史」 高田高史著 柏書房
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