なかの人たち

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第2回 須川綾子 様調布市立図書館

掲載:2011年4月28日

2010年は「ゲゲゲの女房」の舞台として話題になった東京都調布市。今回は、この調布市の市立図書館に勤める須川綾子さんにお話をうかがうため、勤務先の分館を訪ねました。

須川 綾子 様
調布市立図書館
Webサイト
http://www.lib.city.chofu.tokyo.jp/
掲載している情報は2011年1月現在のものです。

2度目のチャレンジでかなった夢

さっそくですが、須川さんのプロフィールをおうかがいしたいのですが。

須川綾子さん(以下、須川)小さいころから本が好きな子でした。親が絵本の読み聞かせをしてくれたり、図書館のお話し会に連れて行ってくれたりと、本が身近にある環境で育ってきたからだと思います。

伯母が学校図書館で司書の仕事をやっていたので、司書という仕事は知っていたのですが、はっきりと「司書になろう」と思ったのは高校の進路希望調査の時です。自分だったらどの仕事をやっていけるかな?と考えた時、本に携わる仕事がしたいという気持ちから、図書館で働くということを意識しました。

person_sugawa_03.jpg本に携わる仕事といっても色々ありますが、須川さんにとっては一番自然に意識したのが図書館だったわけですね。

須川はい。その後、大学進学を考えた時にも、司書資格をとることができる大学に行くというのは決めていました。 そうやって大学に進学して、司書課程をとり、4年生のとき調布市の司書職の採用試験を受けたのですが…落ちてしまいまして(笑)

なんと!

須川それで、その年は就職を諦め、勉強するために新潟の実家に戻りました。一人暮らしでアルバイトなどをしながら勉強するのはとても無理だと思ったので。そして2年後、やはり同じ調布市の司書職採用試験が実施されることを知って、これが最後のチャンスと思い、再度受験しました。今度は無事合格して調布市役所に入所し、現在の仕事に就いて5年目になります。

初志貫徹、狭き門を見事くぐり抜けたわけですね。素晴らしい!今の仕事に就いてからは、どんな業務を担当されてきたのでしょうか?

須川最初に、中央図書館の調査支援係に配属されて、レファレンスを担当しました。覚えることが本当にたくさんあって大変な毎日でしたが、今思うと、最初の3年間をあの部署で過ごしたことは、自分にとって、とても良かったと思っています。

レファレンスをやっていると、なんというかこう、広く蔵書を見ることができるんですね。そのことが、現在の分館での仕事にも活きていると感じています。利用者の方と密にお話をしたり、調べ物をしたり…そういう分館では欠かせない業務にも抵抗なく入っていけたのは、最初の3年間があったからだと思います。

person_sugawa_04.jpg中央図書館と分館の違いって、どんなものでしょうか?

須川もう、全然違いますね。まず、雰囲気が違います。中央図書館は毎日たくさんの人が来館しているけれど、分館はずっと人数が少ない。でも、その分利用者の方との距離はとても近く感じます。

私たちの仕事も、中央図書館でははっきりと分業されていて、それぞれの担当業務を追求していく感じです。でも、分館は職員の数が少ないので、規模は小さくても館全体の運営に気を配らなければいけません。全体を見渡すというのは、中央図書館に居る時は意識していなかったことです。

図書館という枠だけで完結しないように

須川さんは、職場内での自主的な勉強会に参加されていらっしゃるそうですが。

須川はい。「図書館自主勉強会」というものです。入所した年に、先輩に誘われて同期入所の子と一緒に参加したのが始まりでした。以来、ずっと継続して参加しています。

ということは、須川さんが入所されるより前から続いている勉強会なのですね。

須川はい、発足は平成16年度です。市役所で、職員の自主的な勉強会に対して助成金を出す制度があり、その制度を利用して活動しています。活動は年度単位で、毎年申請をして認可してもらい、中間報告・最終報告・会計報告などの活動報告などを提出します。

須川さんの他にはどんな方がメンバーなのですか?

須川今は全部で6人で、私ともう一人同期の司書が一番下で、もうすぐ勤続10年になるくらいの先輩まで。この先輩が、みんなを引っ張って行ってくれていますが、実際の幹事役はみんなで持ち回りでやっていて、報告書の作成なども幹事の仕事です。

活動内容や活動頻度は?

須川毎年、申請の際に年度計画を立て活動はその計画に沿い、だいたい月に1回くらいのペースで実施しています。場所は、許可を頂いて中央館の集会室などを利用します。いつも夕方6時半くらいから始めて2時間くらいですが、話が白熱すると、9時くらいになってしまうことも。

内容としては、どういうテーマをとりあげているのですか?

須川この勉強会が始まったきっかけは、仕事中にレベルアップのための研修の時間がとりにくい、というものでした。でも、勉強会を何年も続けていくうちにメンバーも成長し、関心は業務に直結した問題よりも、司書として、さらには行政職員としての自己研鑚や、行政の中における図書館全体の今後などについて考えるようになりました。たとえば、市の予算や行政計画といったことについて理解を深めるため、市の別部署の職員を講師に招いたこともあります。

身近な疑問解決から、より大きな、広い視点に立った課題に取り組む場になってきたということでしょうか。

須川そうですね、大きな枠で考えるというか、図書館という枠だけで完結しないようにしよう、というのは、メンバーの共通認識となっています。

person_sugawa_05.jpg今年度はどんな計画なのでしょうか?

須川「先輩職員の経験の継承」がテーマです。大先輩である職員の方たちが多く退職されていき、若手がどんどん新しく入ってくる中で、先輩方が培われた経験や能力をきちんと継承できているかというと…なかなか難しいと感じています。そうした中で、自分たちも含めた若手が成長していくために、先輩職員の知識や話を聞いて報告書にまとめ、図書館職員全体に報告を配信し、経験を継承していこう、と。

なるほど。図書館に限らず、多くの企業などでも問題になって、色々な取り組みがされているテーマですね。

須川毎回講師となる先輩職員の方に、それぞれの経験に特化した内容でお話しいただくようにしていて、まだ年度の途中ですが、話していただいたことが役に立っていくという手ごたえも感じています。

みんなで頭を付き合わせて…とてもよい経験に

これまでに開催してきたテーマで、須川さんが個人的に一番面白かった、または印象に残っているものはなんですか?

須川面白かったけれど、同時にとても大変だったものがあります(笑)。

『調布今昔写真集』という地域資料があるのですが、この写真集の索引を作るという作業が、私が勉強会に参加し始めた年に取り組んでいたものです。…というか、実際には、私が入所する前年から継続して2年間にわたるテーマでした。

写真集の索引作り、なんだか難しそうですね。

須川そうですね、それぞれの写真に短い注釈がついているので、そこからキーワードを切りだしたりして、ひとつひとつエクセルに入力して作り上げていきました。

レファレンスで、利用者から「こういう写真はありませんか?」と聞かれることを想定して、そこからキーワードを付与していくというような作業です。みんなで頭を付き合わせて、「これはいるんじゃない?」「これはいらないんじゃない?」と色々話し合って作り上げていきました。

person_sugawa_06.jpgレファレンスを受ける司書ならではの視点で考えるということですね。とても興味深い作業です。

須川索引を作るという作業は初めての体験でしたし、「索引とはなんぞや?」ということを考えたのも初めてで、索引作りの大変さもよくわかりましたし。ですから、とてもよい経験になりました。

また、『調布今昔写真集』に映っている風景と同じ場所の現在の写真を見比べたり、当時の地図と現在の地図を見比べて考えたりという作業の過程で「昔はこの場所にこんなものがあったのね」というようなことも知ることができて、地域のことを知るという意味でもとても勉強になりました。

そういう意味でも、地域資料の索引作りというのはいいテーマだったわけですね。

自主勉強会は目標設定の自由さが一番の魅力

自主勉強会とは別に、職場での公的な研修という機会もあるかと思いますが。

須川もちろん、職場で実施している研修は色々あります。それに、都立図書館が実施している分野別の研修などもあります。また、そうした公的な研修とはちょっと違いますが、最近の研修ですと先輩職員の方が始めてくださった「レビュースリップ研修」というものもあります。

レビュースリップ、とは?

須川児童担当が、選定のために書いている児童書の評価票のようなものです。調布市立図書館では、児童書の選定の際、1冊の本に対して必ず複数の職員が全文を読んだ上でレビュースリップを書いて、選定を行います。

でも、私が分館に来て児童担当になった当初は、まだ自分の中でモノサシになるものも乏しく、レビュースリップの書き方自体もわからなくて。先輩に教えてもらいながらなんとかやっていましたが、とても不安な気持ちでした。

そんな若手の様子を見て、先輩方が業務中に「レビュースリップ研修」というのをやってくださるようになったんです。毎回課題の本を設定して私たちが各自レビュースリップを書き、先輩職員がそれについての講評をしてくださるという形式です。

なるほど、現場のニーズに即した実践的な研修もあるのですね。では逆に、既にそうした様々な勉強・研修の機会はある中での、自主勉強会の位置づけというか、存在意義というのは何でしょうか?

須川これは、メンバー全員の考えではなく、私個人のものかもしれないのですが、テーマの設定が自由だというところかなと思っています。業務上の研修とは違い、この勉強会では、自分たちで自分たちが目指すところを決めることができます。図書館司書としてのスキルアップでもいいし、行政職員としての自己研鑚でもいい。そうした目標設定の自由さが一番の魅力です。

あとは、同じ図書館といってもメンバーの所属部署や勤務地はバラバラで、それぞれ経験を重ねていく中で業務も忙しさを増しています。この自主勉強会という機会がなければ、顔を合わせてじっくり一つのことについて意見を交わしたりすることは難しいと思うので、そういう意味でも、大切な場だと思います。

今後は、もう少し積極的に自分より若い人たちもメンバーに誘って行けたらなあ、と思っています。

新たなメンバーが加わって、さらに活発な勉強会が継続されていくといいですね。

いつでも、どこでも、だれでも」利用できる図書館を

調布市立図書館のことについて少しご紹介いただけますか。

須川調布市立図書館の特長はいくつかありますが、そのひとつは、分館網です。市内には私の勤務する館も含めて10カ所の分館がありますが、これは、「いつでも、どこでも、だれでも」利用できる、を合言葉に、半径800mに1館、人口2万人に1館、小学校区2区に1館という具体的な目標に沿って整備されてきたものです。この分館網がきちんと維持され、機能していることは、大きな特長です。

また、児童サービスに対する積極的な働きかけも特長です。中央図書館、各分館で担当の保育園・小中学校が決まっていて、団体貸出やおはなし会、小中学校の図書室の司書教諭の方々と連携して調べ学習への資料提供なども行っています。それから、市内全ての小学校3年生に向けた図書館利用ガイダンスも実施しています。

person_sugawa_07.jpgということは、調布市で育った方は、一度は必ず図書館利用ガイダンスを体験するのですね。

須川はい。この利用ガイダンスは、調布ではずっと以前から行われてきました。そのほか、児童サービスでは、各館での児童書リストの配布や、先ほどお話に出たレビュースリップなどの取り組みもありますね。

「利用しましょう」と呼びかけても、特に行動範囲の狭い子供たちは、近くに図書館が無かったり、利用方法がわからなかったりすればそのままになってしまう。分館網と利用ガイダンス、どちらも、全ての市民の方が利用しやすい環境を整えよう、という図書館の積極的な姿勢が感じられますね。

須川そのほか資料的な面では、映画資料の収集というものもあります。調布には昔から日活の撮影所などがあった関係で、映画産業が盛んでした。その地域性を活かして、調布市立図書館では以前から映画資料担当を置き、資料を収集してきました。

映画資料と言うと、具体的にはどんなものがあるのでしょうか。

須川映画関係図書をはじめ色々なものがあり、撮影台本なども所蔵していています。実際に現場で使用していたものを寄贈していただいたり、図書館から積極的に働きかけて収集してきたものです。これらは、さすがに貸出はできないんですが、館内閲覧はしていただけます。

それは本当に貴重な資料ですね。機会があればぜひ見てみたいです。

最後に、今後こういう仕事に関わってみたい、という希望などはありますか?

須川これまで、資料係や書誌担当など、資料全体についての流れを把握できる仕事には関わったことがないので、今後機会があればそういう仕事もしてみたいと思います。でもまだ分館勤務2年目なので、まだまだ、この分館でやるべきことがたくさんありますが。

それぞれの業務や、勉強会での経験を丁寧に積み重ねて、成長されていく須川さんの姿が想像できるような気がします。これからも、がんばってください。本日はありがとうございました。

なかの人たちのとある一日

8:30 出勤。開館準備。
一日のスケジュール確認
9:00 開館
[受入資料、新着資料の確認]
[児童担当の業務]
[その他担当している業務]など
10:00
11:00
12:00 カウンター(もう一名の職員と日によって交代)
13:00 昼休み
14:00 児童担当の業務、その他担当している業務など
おはなし会(毎週水曜日15:30~16:00)
15:00
16:00 カウンター(もう一名の職員と日によって交代)
17:00 閉館(4~9月の水・金は18:00まで)
17:15 帰宅
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