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なかの人たち

第4回 嶋田綾子 様千代田区立日比谷図書文化館

掲載:2012年3月22日

「旧・都立日比谷図書館」のサービスを継承・発展させる形で、2011年11月にオープンした日比谷図書文化館。今回はその日比谷図書文化館で情報マネージャーをつとめる嶋田様にお話をうかがいます。

嶋田 綾子 様
千代田区立日比谷図書文化館
〒100-0012 千代田区日比谷公園1番4号
Webサイト
http://hibiyal.jp/hibiya/index.html
掲載している情報は2012年2月現在のものです。

図書館員を目指した学生時代

さっそくですが、嶋田様のプロフィールを教えてください。

嶋田綾子さん(以下、敬称略)もともとは全然本を読まない子でした。小学校5年生の時に、本を15冊読むと全校表彰する制度がはじまり、そこでなぜかはまっちゃって、いきなり本を読むようになりました。

佐藤さとるのコロボックルシリーズにヒロインが司書補の資格をとるという話があり、そこで司書という仕事がある事を知ったのが図書館で働こうと思ったきっかけですね。

そして、中学生の時に家族旅行で筑波のあたりを通った時に、カーナビの表示で図書館情報大学という存在を知り、そこからは一直線という感じで。

中・高時代は図書館情報大学に入ることを意識した勉強をされていたんですね。

嶋田いえ、そうでもなくて美術とか音楽とかを結構やっていました(笑)。美術では全国で賞をとるほどだったんですよ。

でもいろいろ悩んだ末に、やっぱり図書館をめざすことに。

そういった芸術の経験を生かした図書館員になろうとは考えましたか?

嶋田それはそれ、これはこれと考えていました。

図書館員としての目標は「コンピューターにむちゃくちゃ強い図書館のおねえさん」。なので、大学ではどちらかというと情報学が専門でした。それにプラスアルファとして、図書館学の単位もとりました。

研究分野も情報学系ですか?

嶋田そこはなぜか子どもの読書関係なんです。子どもたちの読書離れの理由は?といったことがメインで、その世代に本を届けることを意識していました。 自分で運営していたホームページ [※1]では中高生を意識して、月1でテーマを決めて作ったブックリストで本を紹介するといったこともしていました。

図書館員としてのスタート

卒業してからはずっと公共図書館にお勤めだったんですよね?

嶋田老いも若きもって言ったら変ですけど、ターゲットを限定されず幅広い人たちに情報提供できるというところに魅力を感じたので、公共図書館志望でした。 大学1年生の頃から地元の県立図書館でアルバイトをしていまして、採用試験を受けなおして卒業後はそのまま嘱託職員という形で勤務することになりました。

学生時代のアルバイトと、就職してからの仕事内容は変わりましたか?

嶋田アルバイト時代は貸出・返却といったカウンター業務と、簡易のレファレンスを行っていたのですが、就職してからはカウンターを離れ、裏方で資料整理の仕事をしていました。

資料整理の仕事は基礎固めとしてすごくいい環境だったと感じています。

すべての資料に目を通すという状況で、出版された新刊図書全体と、その中から選ばれた資料を対照して見るコツをつかみました。

また、与えられた仕事だけでなく自分のやれる仕事をふやしていくことを意識しました。

その勤務先では児童書は所蔵してなかったのですが、児童サービスについても自主的に研修に行ったり、意識して本を読んだりしていましたね。

他にも、レファレンス業務の腕を磨くつもりでYahoo!知恵袋 [※2] に回答したり。やれることをやろうと。

ブログをきっかけに転職

図書館員としてだけでなく、個人でも"図書館系ブログ集"を作るなどの活動をされているそうですが。

person_shimada_03.jpg嶋田図書館系ブログ集[※3]を公開したときには反響が大きく、日外アソシエーツのレファレンスクラブ[※4]でも紹介されました。

また、学んだことをアウトプットしようと思って、自分自身もブログ[※5]に研修記録とかその時々の図書館の話題について自分の意見を書いていました。

そうしたらあるとき、ブログのコメント欄に「スタッフに空きがでるから来ないか」というお誘いがあったんです。当時の勤務先の館長さんは日頃から「いい話があったらいつでも行っていいよ」と言ってくれていたので、じゃあという感じで町立の図書館に移ることになりました。

それまでの積極的な活動が認められたんですね。

町立図書館でホームページを担当

その町立図書館でのお仕事はどんな感じだったのでしょうか?

嶋田すごく活気のある図書館で、地元の小学生がクラス単位で学期に一度はバスで来て、わーっとなるんです。

小学生と言っても慣れたもので、自分で読みたい本を抱えてきては、児童コーナーの隠れ家的なところにみっちりはまって一生懸命本を読んでましたね。そこでは臨時職員として2年半勤めました。最初は産休の職員の代わりというか、とくに担当がない図書館だったので業務全般をやる感じで。

今でも覚えているのは、おはなし会をやるようになってしばらくたったあるときのことです。ペアを組んだ人が急にお休みしてしまって、全部ひとりでやることになりました。その時は収拾つかなくなって。児童サービスの勉強はしていたつもりだったのですが、やっぱり全然足りなかったと思いました。

そのほかに意識して取り組んだ仕事や、印象に残っている仕事はありますか?

嶋田産休の職員が戻ってきてからは、その図書館の特徴といわれていたホームページとブログの仕事を引き継ぐことになり、一日中電算室にこもって仕事をすることが多くなりました。朝夕7紙の新聞に全部目を通して、記事に登場した資料はリストを作って公開するということをしていました。

ただ、ホームページは資料の情報を公開するためのプラットフォームのひとつにすぎないんだということを何度も聞かされていたので、新聞をチェックして得られた情報を活かして館内展示を入れ替えるといったことも行いました。

資料整理の責任者になって

町立図書館の後はどうされたのですか?

嶋田臨時職員の任期を終えた後、いくつか声をかけてもらっていたのですが、いろいろ悩んだ末に図書館運営の会社に入りました。

最初に配属されたのは指定管理者制度へ移行する市立図書館で、資料整理の責任者として働くことになりました。いきなり責任者になり、仕事内容も今までとはガラッと変わって、自分で手を動かすというよりも仕事の仕組みを作っていくのがメインになりました。

民間企業のおもしろいところで、スタッフにはいろんな出自の人が集まっていました。前職が学童保育の先生とか旅行代理店の人とか。図書館の経験はないけど、いろんな発想を持った人がいて、それぞれの専門を活かせたらすごいことができると思いました。

そうした環境で、責任者という立場でどんなことに力を入れたんでしょうか?

嶋田最初に、そうしたスタッフたちに伝えたのは、自分の専門性があるというのは強みだから、それを図書館の業務に沿った形にしていくのは私がやるので、みんなの知識を活かして仕事していこう、ということ。

実際に、元旅行代理店の方に旅行ガイドの見直しをしてもらったり、ホームページのリニューアルの際には元SEの司書の方にコーディングしてもらったりしました。

スタッフの多様性という特徴をいかした、民間企業ならではの取り組みといえるかもしれませんね。

日比谷図書文化館の開館にあたって

person_shimada_04.jpgそんな中で、旧・都立日比谷図書館サービスを引き継いでオープンする日比谷図書文化館の開館準備にたずさわることになったのですね。

嶋田日比谷図書文化館に異動になったのは2011年の9月です。9月1日からやっとスタッフが建物に入れるようになった状況で、11月のオープンに向けて短い期間で準備しないといけない状況でした。

開館準備として具体的にはどんな仕事を担当されたのですか?

嶋田図書の整理です。とにかく開館までに図書を書棚に収めなきゃいけないのですが、どの分類の資料が何冊あるかわからない状態。だいたい分類ごとに書棚は決まっていたのですが、実際に並べてみないと入るか入らないかわからないという状態で大変でした。蔵書の構成も、公共図書館は9分類(文学)が多いのが一般的ですが、日比谷図書文化館はそれより3分類(社会科学)が多かったのでびっくりしましたね。

開館してからのお仕事は?

嶋田閉館していた3年間は新しい資料を購入はしていたものの、どうしても蔵書構成に不備がでている分野があり、そこを重点的に補充しています。

また、地域資料などが未整理のまま閉架書庫にしまわれていて、こちらはデータを作るところから作業を行っています。

日比谷図書文化館は、図書館機能だけでなくミュージアム機能をあわせ持つ文化施設ということですが、「なかの人」として、目指すところや課題はなんでしょうか。

person_shimada_05.jpg嶋田ここは各フロアごとに「図書館機能」「ミュージアム機能」「カレッジ(交流)機能[※6]」という異なる機能をもった複合施設なのですが、実際にはまだ各フロア同士の連携がうまくいっていないところもあります。でもそれを融合させていけたら、すごいことができるという将来性を感じています。特に本から学びきれないことを人との交流から学ぶというカレッジ機能は、色々な形で図書館機能と連携していく可能性を秘めていると思います。

次の世代を視野に

最後になりますが、今後嶋田さん自身が取り組んでいきたいことがあれば教えてください。

嶋田図書館員のスキルと地位の向上ですね。それができて初めて図書館自体も良くなっていくと思うんです。この館に限らず、もっと全体を良くしていきたい。

そのために、図書館員にはもっと「全体的な視野」をもってもらいたいし、新しいことに対してキャッチアップしていけるようになってほしい。

もちろん基礎的な部分、例えばレファレンス、目録業務、出版動向を意識した選書などをちゃんとできる人材ももっと育っていって欲しいなと思うし、育てていきたいなと思います。

そして、もっと若い世代の人たちが「図書館で働きたい」、「図書館で働き続けられる」と思える環境をつくっていきたいです。

いくつもの図書館を経験して成長していく嶋田様のお話が印象的でした。今後のさらなる活躍が楽しみです。本日はありがとうございました。

なかの人たちのとある一日

9:00 出勤・打ち合わせ・開館準備
10:00 新規購入図書の受入作業
11:00 昼休み
12:00 受入作業の続き
13:00 出張(書店での見計らい)
14:00
15:00
16:00 館内で会議
17:00 翌日の選書会議の準備
18:00 帰宅