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トカツ

鶴見大学学生サークル「情報バリアフリー推進会」

掲載:2020年7月31日

鶴見大学では、図書館学や情報学などを学ぶことができ、図書館司書や司書教諭、博物館学芸員などの資格取得も可能なため、図書館司書を目指す学生が多く在籍しています。

鶴見大学文学部ドキュメンテーション学科の教授でもあり、鶴見大学図書館の図書館長でもある元木章博教授が率いるサークル「情報バリアフリー推進会」を紹介いたします。

鶴見大学学生サークル「情報バリアフリー推進会」
名称
情報バリアフリー推進会
活動内容
図書館の障害者サービスとしての情報保障の研究と実践
人数
13名
ウェブサイト
http://blog.tsurumi-u.ac.jp/motoki/

サークルの構成を教えてください。

この「情報バリアフリー推進会」は、文学部ドキュメンテーション学科の学生が多く所属するサークルですが、他の学部の学生も所属しています。

図書館は利用者に情報を提供するという役割を担っています。「情報保障」は知る権利を保証するということですが、例えば目が見えにくかったり耳が聞こえにくかったり、と、情報を取得するのが困難な利用者も情報にアクセスできるようにするための支援活動を、私たちは行っています。

「情報保障」についてもう少し詳しく教えていただけますか

たとえば高齢者や弱視の方のように見えづらい方にとっては、「白地に黒文字」よりも「黒地に白文字」のように白黒反転している方が見やすい、という意見があります。

この話から、私たちのサークルは、鶴見大学図書館の館内サインを黒地に白文字という反転したサインに変更しました。サインは黒い用紙に白インクで印刷しています。特に目に不自由を感じていない人にも見やすいと言われます。特定の人だけではなく誰にでも情報を取得しやすいバリアフリーの例だと思います。

このサインは資料の配置換えなどに合わせて定期的に更新しています。

大学図書館が実践の場になっているのですね。ちょっとした配慮ですべての人に使いやすくなるのはいいですね。

他には、手話や発話内容の字幕化(パソコンテイク)も学んでいます。先日のオープンキャンパスでのサークル紹介では、絵本の読み聞かせにあわせて手話とパソコンテイクをあわせるというパフォーマンスを披露しました。

入学式などの式典でも、学長などの発話内容を字幕化(パソコンテイク)する活動を行っています。学長の話がリアルタイムで字幕化されることで、情報保障が行われ、すべての人にわかりやすく伝わるようにと考えています。この式典の様子を見て興味を持った新入生がサークルに入ってくれました。また、学内には他にも手話のみを対象としたサークルもあるのですが、聞こえないだけではなく見えづらいなどいろいろな障がいがあるので、それらに対して総合的に対応したいなと思った、と、私たちのサークルを選択してくれた人もいます。

入学式の様子

学校の式典でも活躍されているのですね。

はい。図書館の中だけではなく、学校や社会にも働きかけていきたいと思っています。長期的に活動をすることが重要なので、周りに理解していただき、関わってもらえたらと考えています。

この他にも、絵本をいろいろな形式で紹介する試みを行いました。こちらの「ねこじた」という絵本を、「大活字」「英訳」「英訳(日本語付き)」「点字」などの本と、「手話付き」「マルチメディアDAISY」などのDVDで作成した例です。「グロンギ語[※1]」も作ってみました(笑)。

ひとつの本をこれだけ様々な形式で表現するという試みは珍しいようです。この絵本の冒頭に記載した「あなたにとっていちばんたのしいとおもえるどくしょのカタチがみつかりますように」という言葉の通り、自分に合った本が見つかるといいなと思います。

日本語がネイティブではない方や、目の不自由な方も同じ本を楽しめるのですね。グロンギ族にも猫のかわいらしさが伝わるといいなと思います(笑)。ところで、大学のホームページを拝見したところ、アクセスマップ[※2]に「ことばの道案内」というリンクと情報バリアフリー推進会の名前がありましたが、これはどのような活動なのでしょうか。

認定NPO法人ことばの道案内という団体が、目が不自由な方のために道案内を言葉で行う、という活動を行っています。私たちの団体も共同で、最寄り駅である鶴見駅から大学までの道のりを言葉だけで表現しました。例えば「改札口を背にして通路を正面12時の方向へ1メートルほどすすむと、右3時方向への点字ブロックの曲がり角があります」のように、方角を時計の文字盤になぞらえて、具体的な距離とともに案内しています。歩くときに障害になりやすい縁石や段差の情報も記載されています。

今年(2019年)は、鶴見駅から横浜市立鶴見図書館までのことばの道案内も作成しました。

距離を測量している様子

様々な活動をされているのですね。2019年6月21日には、読書バリアフリー法[※3]が成立しました。今回の取材で、この法律が掲げる「障害の有無にかかわらず、すべての国民が文字・活字文化の恵沢を享受できる社会」を実現するためには、ハードウェアの面での整備も必要ですが、私たちが、障がいやその対応について知ることも必要だと感じました。このサークルのような活動が活発になれば、周囲にも情報保障という考え方が浸透していき、誰もが自分の好ましい形で読書を楽しめる社会になるのだろうと思いました。

本記事の内容は取材時(2019年8月)のものです。