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専門図書館見学記

市政専門図書館

掲載:2017年3月7日
図書館名
市政専門図書館
住所
東京都千代田区日比谷公園1-3 市政会館1階
URL
https://www.timr.or.jp/library/

市政専門図書館って、どんな図書館?

今回、見学させていただいた市政専門図書館。都内ダンジョンの、いったいどこにあるのか?地方在住者ゆえのドキドキわくわく感とともに、まずは、お決まりのスマホ頼みで交通アクセスをチェック。えーと、住所は...え、「日比谷公園」!?

市政専門図書館は、公益財団法人である後藤・安田記念東京都市研究所(以下、研究所)によって設置された、私立の専門図書館です。1922(大正11)年の設立以降、地方自治や都市問題に関する調査研究に役立つ資料の収集保存が行われています。これらの貴重な資料は、広く一般公開されています。入館は無料で、閲覧、貸出、複写(郵送を含む)、レファレンスなど、誰でも利用することができます。

市政専門図書館の入り口

研究所の始まりは、当時の東京市長・後藤新平が創設した、財団法人の東京市政調査会です。都市問題の解決を目指して調査研究を推進し、その成果を行政に反映させていく、そのための調査研究機関として設立されました。後藤氏が提唱した「行政の科学化により自治制の根本を培っていく」という理念をもとに運営されています。

1925(大正14)年創刊の機関誌『都市問題』は、現在も発行されています。また、後藤氏の創設理念に共感した稀代の銀行家・安田善次郎からの巨額の寄付をもとに、関東大震災後の1929(昭和4)年に竣工された市政会館は、戦禍を免れ、現在は歴史的建造物として保全される建築物になっています。

市政専門図書館は、日比谷公会堂に隣接している市政会館の1階にあります。日比谷公園は何度も通ったことがありますし、同公園内にある日比谷図書文化館にも何度か足を運んでいます。しかし、市政会館の中には一度も入ったことがありませんでした。こんなディープなライブラリーがここに!?しかも、一般公開されている!恐縮ながらの初潜入は、今まで自分が知らずに気づけなかっただけなのですが、まるで魔法の城が突然現れたような、不思議な気分でした。

市政会館の全景

貴重なコレクション資料

市政専門図書館では、明治期から現在までの都市問題・地方自治関係資料が約14万冊所蔵されています。特筆すべきは、こちらでしか所蔵されていない、貴重なオリジナルコレクションの数々です。これらが、保管されているだけでなく、実際に手に取って閲覧利用することができるという、まさにマニア垂涎のユートピアとなっています。今回見学させていただいた際も、副館長自らのご案内とご解説のもと、「お宝」な資料を次から次へと惜しげもなく、間近にかつ実際に手に取らせていただきながら拝見させていただきました。

田村副館長、お忙しい中本当にありがとうございました。

書庫の様子

『蔵のなか-市政専門図書館蔵書紹介 Ⅰ』

貴重なコレクションを解説付きで紹介している冊子があります。『蔵のなか』という、なんとも魅力的なタイトルの冊子です。

「蔵のなか」の表紙

機関誌である月刊『都市問題』に掲載された記事をまとめたもので、2011年の発行です。残念ながら非売品とのことですが、どのような資料が紹介されているかは、市政専門図書館のサイトでも見ることができます。

1923(大正12)年9月1日に発生した関東大震災の翌日、内務大臣就任直後の後藤新平(1857~1929)によって構想された『帝都復興ノ議』をはじめとして、日本の首都である東京という都市が、過去において、どのような理念のもとに形成されてきたか、また、関東大震災などの様々な危機的な局面において、どのような覚悟で乗り切ってきたか、当時の状況に想像を巡らせるほどに、姿勢を正さずにはいられない心持になります。

また、同じくサイトにおいて、戦前期の都市計画地図や昭和三陸津波に関するこれまた貴重な資料が、デジタルアーカイブスとして公開されております。

今後、世界中の誰も経験したことのないという「超少子高齢化」という課題を抱えている日本で暮らしていく私達にとって、このような過去における取り組みを知ることができるコレクションが残されていること、それ自体も貴重なお宝ではありますが、様々に活用されてこそ、その価値もさらに上がります。一人でも多くのライブラリアンが、まずはこれらの資料の存在を知り、そして必要とする人につないでいくことが益々求められていくのではないでしょうか。

見学者
  • 小廣 早苗(千葉県佐倉市立志津図書館勤務)
見学した専門図書館
市政専門図書館
※アイコンは佐倉市ゆるキャラ「カムロちゃん」との写真です