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専門図書館見学記

昆虫図書館(練馬区立稲荷山図書館)

掲載:2024年1月9日
図書館名
練馬区立稲荷山図書館
住所
〒178-0062 練馬区大泉町1-3-18
URL
https://www.lib.nerima.tokyo.jp/institution/detail/10

昆虫と昆虫担当司書さんのいる図書館

図書館総合展企画「あなたも使える専門図書館2023」で知った練馬区立稲荷山図書館。

「昆虫図書館」として昆虫の本だけでなく、標本、生体までも展示しているとのことで、昆虫大好き5歳の息子を連れて興味津々で見学に行ってきました。

西武池袋線石神井公園駅からバスで約15分。土支田(どしだ)二丁目バス停から降りて閑静な住宅地を少し歩くと稲荷山図書館はありました。

近くにある「稲荷山憩いの森」と「清水山の森」の間に位置する緑豊かな環境です。

館内に入ると、目に入ってくるのがタッチパネル式のデジタルサイネージです。

図書館の案内だけでなく、昆虫標本のデジタルアーカイブも大きな画面で見られるなど、早々に「昆虫図書館」としての期待感を高められました。

写真提供:練馬区立稲荷山図書館

この日は昆虫担当の司書、栗田さんにご案内をしていただきました。

入口近くのカウンターを通り過ぎようとすると、栗田さんから「ヘラクレスの幼虫を展示していますよ」と教えてもらい、5歳の息子はすぐに惹きつけられ興味津々で観察していました。

私はまだまだ幼虫など恐る恐る見てしまうタイプなので、カウンターに座る司書さんに「幼虫とか大丈夫ですか?」とお尋ねすると、「最近は慣れました」と笑っておっしゃっていたので、私ももう少しすれば慣れることができるかなと思うことができました。

写真提供:練馬区立稲荷山図書館

いよいよ昆虫コーナーへ

カウンターを通り過ぎた奥には今回の目的「昆虫コーナー」がありました。

昆虫に関する本が約8000冊、昆虫の標本はおよそ5000点所蔵されているとのことです。(2023年時点)

壁面にはたくさんの標本が展示されていました。

これらの標本は寄贈されたものもあれば、図書館として収集したものもあるそうです。

同じ昆虫でも表面と裏面が見えるように展示されているなど、作成者のこだわりが表れているものもありました。

これらの標本も展示するだけでなく、良い状態で保管するために中の防虫剤を定期的に入れ替えて管理することも司書さんのお仕事です。

そして標本だけでなく、生きている昆虫も展示されているのがこちらの図書館の魅力のひとつです。

これらの昆虫のお世話も司書さんが行っています。訪問時はカブトムシの幼虫と美しい色のニジイロクワガタが展示されていました。

昆虫コーナーの一角には、昆虫図書のテーマ展示もありました。

昆虫資料の中でさらにテーマを絞って展示ができることからも資料が充実していることがうかがえます。毎月テーマを変えて展示しているとのことで、その企画力もさることながら、テーマ展示という形でいろいろな切り口から昆虫資料を紹介する試みも素晴らしいなと思いました。

テーマ展示の様子はJcross「図書館のテーマ展示」にも掲載されていますので、そちらもぜひご覧ください。

図書以外のコンテンツも充実

昆虫コーナーには昆虫クイズ出題機(愛称いなQ)が設置されていて、自由にクイズに挑戦できるようになっていました。

ランダムに5題ずつ出題され、5歳の息子も挑戦してみると、全問正解できることもありました。

息子は夢中になってしばらく挑戦していましたが、ランダムなので前に間違えた問題がまた出ることもあり、学習したので次は回答できるなど、クイズ形式で昆虫の知識をたくさん身に付けることができました。

練馬区立図書館では公式チャンネルにて動画配信を行っています。

稲荷山図書館でも昆虫に関する動画を作成・公開していて、昆虫コーナーでも閲覧できるようになっていました。

動画が大好きな息子は思った通り興味津々で見入っていました。

昆虫専門資料の数々

息子が標本やクイズなど図書以外のコンテンツに夢中になっている間、資料の方に目を向けるとまずは昆虫分類の細かさに驚かされました。「昆虫関係図書分類表」を見ると、「486:昆虫類」がこんなにも細かく分類されていました。

特に「蝶」は資料の数も多いということから、国別、種類別、日本では地域別にも分けられ、「蝶」だけでとても細かく分類・配架されていました。

また、昆虫に関する専門雑誌や学会誌、同人誌なども多数所蔵されていて、昆虫の専門誌がこれほどあることに驚きました。

『月刊むし』など昆虫関係の雑誌は創刊号から所蔵していたり、入手困難と思われる地域の同人誌なども収集・所蔵していたりするため、九州地方や東北地方などから閲覧にやってくる方もいらっしゃるそうです。

昆虫コーナー最後の書棚は児童向け図書コーナーとなっています。

『ファーブル昆虫記』などをはじめとした児童資料も数多く所蔵され、児童向け昆虫資料の書棚も、昆虫の種類ごとの分類になっています。

この書棚が終わると昆虫コーナーは終わりますが、すぐ隣からは児童書の4 類(自然科学)が続くため、昆虫コーナーから違和感なく次の分類につながり、読み物、昔話や絵本コーナーへと自然と続いていく配架にも感動しました。

ちなみに、1階は昆虫コーナーの他、絵本、小説などの読物、視聴覚、青少年コーナーとなっていて、その他の一般書籍や参考資料は2階と住みわけがされています。

昆虫レファレンスを受けてみる

我が家でもカブトムシの幼虫を2匹譲り受けて育てているのですが、いまいち育て方が分かっていません。時々土の上に出てきていることがあり、それがいいことなのか悪いことなのかも分からず心配でした。

それもあり、幼虫の育て方について栗田さんに相談をしてみました。

すると、すぐにカブトムシの飼育に関する本を3冊ほど持ってきてくださり、幼虫の育て方について書いてある箇所も示してくださいました。

幼虫が土の上に出てきてしまうのは土が発酵して熱を持ち幼虫にとって暑いせいだということが書いてあり、容器のふたを開けて空気を逃がすとよいということが分かりました。

毎年、卵からかえった幼虫は2階の事務室で飼育され、夏になり成虫になったカブトムシは昆虫コーナーで常時展示されるというルーティンになっているそうです。

卵から日々お世話をするのも司書さんのお仕事とのことでした。

資料についても熟知し、実際の飼育も行っている「昆虫図書館」の司書さんはとても頼もしい存在でした。

夏は昆虫図書館の本領発揮!

毎年夏になると「昆虫図書館」はオンシーズンとなり、昆虫に関する絵本の読み聞かせや、成虫となったカブトムシの常設展、エサやり体験などが行われます。

昨年の夏は「稲荷山憩いの森」での昆虫採集を行うなど、子どもたちに人気のイベントも目白押しだったそうです。

こまめにイベントをチェックして、次の夏には私も息子とともに何度も足を運ぶことになりそうです。

昆虫好きの息子がいなければ興味を持つことのなかった世界ですが、緑豊かな立地にちなんだ資料と豊富なイベント、図書以外のデジタルコンテンツの充実など、特色を存分に活かした魅力ある図書館を訪れることができ、とても視野が広がりました。

お忙しい中ご丁寧に案内してくださった栗田さん、司書の皆様本当にありがとうございました。

魅力ある資料とイベント、専門知識を持つ司書さんとでこれからもファンを増やし続けていく様子をJcrossでも応援していきたいと思います。

見学者
秋葉小夜子(株式会社ブレインテックJcross担当)
見学した専門図書館
練馬区立稲荷山図書館